安全な中絶を選ぶことができる制度を

 なぜ海外でこれだけ広がっている中絶薬が、日本では認められてこなかったのか。いちばん大きな要因は、中絶する女性への偏見を助長する時代遅れな法制度にある。

 例えば、日本の刑法では、中絶を罪とする堕胎罪が明治期の制定後未だ廃止されていない。戦後にできた優生保護法(現・母体保護法)のもと、経済的理由などによる中絶は可能になったが「配偶者の同意」が必要。夫の許可がなければ、女性が望んでも中絶できない現状があるのだ

 今年9月、任意団体『#なんでないのプロジェクト』の梶谷風音さんは、「配偶者同意」の廃止を求める署名を厚労省に提出した。さらに今月から新たなキャンペーンを立ち上げた。中絶薬の速やかな認可と誰もが安全で経済的・身体的負担の少ない中絶が受けられる制度を求め、問題を周知し署名を集めている。

梶谷さんらが今月から新たに始めた、「安全で安心な中絶」が受けられる制度を求めるネット署名
【写真】女性の中絶負担を減らすために始まったネット署名

「日本では産まない選択をする女性の人権が認められていません。世界で認められた安全な中絶薬が日本では使えないため、やむをえず中絶薬を輸入し飲む女性もいますが、今の日本の法律では堕胎罪に問われる可能性もある。自分の身体のことを選ぶのになぜこんな思いをしなければならないのか」(梶谷さん)

 安心、安全な中絶法を女性が主体的に選ぶことができる法律や制度を、一刻も早く実現してほしい。

●人工妊娠中絶の方法

・そうは法
金属製の器具で子宮内の内容物をかき出す。合併症のリスクがあるため医師の高度な技術が必要。WHOは「安全性に劣る時代遅れの中絶法」と指摘。

・吸引法
子宮内に管を入れ内容物を吸い取る。金属性の筒状の器具を使い電動ポンプで吸引する「電動吸引法」と、軟らかいチューブを使って手動で吸引する「手動真空吸引法」がある。WHOが推奨。

・中絶薬
黄体ホルモンの働きを抑える「ミフェプリストン」、子宮の収縮を抑える「ミソプロストール」の2種類を飲む。世界80か国以上で使用。WHOが推奨。

取材・文/岩崎眞美子……フリーランスライター。1966年生まれ。音楽雑誌の編集を経て現職。医療、教育、女性問題などを中心に雑誌や書籍の編集に携わる