先日開催された『M-1グランプリ2021』。決勝進出者の中で最後に登場した、“まもる。”と“せめる。”のコンビ「もも」のネタが一部で問題視されることがあった。

 ネタ中、メガネでおかっぱ頭、おとなしそうな“せめる。”に対して、「転売目的顔やろ」「プリキュア映画行く顔やろ」「(財布が)三つ折りマジックテープ顔やろ」と、相方の金髪ヒゲ面の“まもる。”がオタク的なネタでいじりまくる。これに対して、オタクの見た目いじりだと不快感を覚えた一部視聴者が、SNS上などで批判コメントを書き込むような事態が生じてしまった。

見た目いじり芸人は絶滅してしまうのか

 昨今のルッキズム(外見にもとづく差別や偏見)への向き合い方の流れから、お笑いの世界にも大きな影響が及んでいる。「ブサイクいじり」によって笑いをとってきた一部芸人が不快感を顕にし、見た目いじりのネタを封印する流れができていった。

 今回のもものネタ、さらに批判の声があったことを受けて、人気バラエティーなどを手掛けるある放送作家は、芸人の見た目いじりの封印について、やや同情的な見方を示す。

「ひな壇バラエティーのトークの流れでいじられるのと、ネタの中でいじられるのは、本質的に違うはずなんですけどね。ネタはフィクションという捉えかたもできるので難しいラインではあります。とはいえ、ドラマなどでも”ブス”や“デブ”いじりは避ける傾向にあるので、芸人の見た目いじりネタも難しいのかもしれません」

 実際、見た目いじりをする芸風は減少傾向にあるといい、「デブ」や「ハゲ」、「ブサイク」というだけで笑いをとる芸人さんはほとんどいないどころか、「怖くて使えない」とすら感じるという。つまり、見た目いじりはもはや「使えない」時代に突入しているのだ。

「ハゲ、デブ、ブサイク、そのいじりだけで出てきちゃった芸人たちは、最大にして唯一の武器を失ってしまうわけですから、それを封じられると死活問題。それらの発言は炎上の原因になるので、迷わずカットの対象になっています」(同前)

 見た目いじりで多くの笑いを取ってきた芸人は、この先絶滅してしまうのだろうか。前出の放送作家に聞いてみると、間髪入れず「それはありません」とこう断言する。

アインシュタインの稲ちゃん

「アインシュタインの稲田さんは、ブサイクだといじられまくっていましたが、それができなくなっても、ちゃんとトーク力があるので、見た目いじりを封印してもおもしろい存在でい続けられるわけです」

 では「チェケラッチョ、ハゲラッチョ!」のかけ声で、互いのハゲいじり(ハゲ自慢)で笑いを取って人気を博し、M-1王者の座にもついたトレンディエンジェルの場合はどうか。自虐とはいえ、ストレートな見た目リズムネタではある。

「トレンディエンジェルさんも、そういったネタは今はおさえてますよね。基本的に自分たちのことを言っているだけなのに、世の中の誰かを傷つけてしまう可能性がある。だったらやめたほうがいい、という選択になりますね」(同前)

 世界的なルッキズムの流れに適応して、新しい笑いを届けられる芸人が求められる時代になった。この流れはまだまだ続きそうだ。

〈取材・文/渋谷恭太郎〉