疲れたときにおすすめの音読

『心の飛沫』(宮本百合子)

 胡坐(あぐら)

ああ 草原に出で
ゆっくりと楡(にれ)の木陰
我が初夏の胡坐を組もう。

空は水色の襦子(サティン)を張ったよう
白雲が 湧(わ)いては消え 湧いては消え
飽(あ)きない自然の模様を描く。
遠くに泉でもあるか
清らかな風のふくこと!

私は、蟻(あり)の這(は)い廻る老いた幹に頭を靠(よ)せ
牧人(まきと)のように
外気に眼を瞑(つむ)って 光を吸う。

耀(ひかり)や熱に 魂(たましい)がとけ
軽々と情景に翔(と)ぶ この思い。

(出典:宮本百合子『宮本百合子全集 第十七巻』新日本出版社)

■音読のポイント

「とっても気持ちのいい詩ですね。青空の下、草原の中で木陰にいる自分を想像します。私は題名の『胡座』からヨガや瞑想(めいそう)中の自分を思い浮かべました。そんな場所で思わず出る“ああ”は、一体どんな声なのか……。きれいに読む必要はないので、想像の中のさわやかな情景に身を置き、読んでみましょう」