細かい裏切りの連続が、人間に楽しさをもたらす

 毎日毎日同じことの繰り返しでつまらない、と感じている人もいらっしゃるかと思うが、羽田さんは「人間には『飽き』との戦いがあり、その飽きを打破するのが『面白さ』であり、面白さは『細かい裏切り』にある」という。

『三十代の初体験』羽田圭介/主婦と生活社※記事の中の写真をクリックするとAmazonの購入ページにジャンプします
【写真】ギャル風メイクの女装をする芥川賞作家・羽田圭介

例えば決まりきった散歩コースがあったとしても、季節の移り変わりで紅葉したり、葉が枯れ落ちて風景が変わったりする細かい意外性、裏切りがあるから楽しいんです。

 そうした細かい裏切りの連続が、人間に楽しさをもたらす。それがわかりやすく発露するのが初体験で、予想していたことが細かく裏切られていくから楽しさがあるんです。

 そしてその経験を通じて、自分が本当は何を求めていたのか、何が大事なのか、何を楽しみに感じるのか、ということが整理されるんです。たとえ変わり映えしない日常だったとしても、深く考え続けるほうが大事だったりもする。そういうことも、初体験をしたことでわかりましたね

 初体験を通じて「思ってたのと違う」「意外と楽しい」「こんなはずじゃなかった」「なぜこんな結果に」と予想と違う事態を面白がる羽田さんの姿、ぜひ本書で楽しんでほしい!

●好評発売中●『三十代の初体験』……46の初体験を収録したエッセイ集で、自己啓発の側面もある一冊。突飛な発想や物議を醸しそうな感想まで赤裸々に綴られ、予定調和な結末がないのも読みどころのひとつ

〈取材・文/成田全〉