「ごめんね」よりも「ありがとう」

「一般的には、親の再婚を耳にしたとき、子どもの心には『嬉しいと思う気持ち』と『嫌だと思う気持ち』の両方が芽生えます。嬉しいという気持ちには、単純に遊んでもらえる喜びや近くにいてくれる安心感、または大変そうな親を見ているからこそ、その親が幸せになってくれるなら嬉しいと感じることもあります。

 一方で、嫌だと思う気持ちの中には、自分の大好きな親を再婚相手に取られてしまう、親の再婚相手と深い関係を作ることができるのかという不安な思いも。色々な要素によって、どちらの気持ちが大きくなるかは変わっていきます」

 子どもの心理について、そう話すのは精神科医の井上智介先生。まずは子どもの心情を理解したうえで、対話を重ねることが大切だという。

「もし子どもが再婚に反対した場合、『なぜ嫌がっているのか?』という本音がわかるまで、話し合うことが重要。相手は子どもなので、上手く言語化できない可能性も理解しつつ、反対する本当の理由をくみ取っていってください。もしその理由が聞き出せたら、『たとえパパが再婚しても、○○(子どもの名前)が一番なのは変わらないよ』と言ったように、不安が解消できるよう、言葉で伝えていくことが大事です」

 実際、子どもの頃に親が再婚したという人の中には「当時は嫌だった」「本音を言えなかった」と話す人も少なくない。死別ともなれば、なおさらのこと。子どものために、親が気をつけるべきことは?

「子どもが嫌がっているのに、相手のよさを理解してもらおうと再婚予定の相手と子どもを無理に会わせたり、再婚を反対する理由がイマイチ分からないまま、『新しいお母さんが来たら……』『お父さんがいたら……』といった再婚のメリットばかりを説明して、子どもを言いくるめようとするのはNG。『なんで自分の気持ちを分かってくれないの』と、親に対して不信感を抱いてしまうことになります」

 また、周囲の発言にも注意が必要だとか。

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「親がいないことを寂しく思っている子どもに『新しいお母さんができてよかったね』というような声かけには注意が必要です。

 子どもはまだまだ『自分のママは一人しかいない』と考えていることもあります。自分の大切な人をないがしろにされたと感じて、とても悔しくて悲しくて、再婚への強い反発につながることがあるからです」

 実際に、子どもの頃にそのような言葉をかけられ、傷ついたという声も聞こえてくる。大人がよかれと思ってかけた言葉が、子どもたちを深く傷つけてしまう……そんなこともありえるのだ。では、再婚について子どもと対話する際、どのような「言葉」が必要になるのか。

「親も子どもの不安な気持ちを敏感に察知するときもあるので、つい『ごめんね』という言葉をかけがちです。しかし、『ごめんね』という言葉は『再婚することは悪いことだ』というイメージを植え付けてしまいます。

 『ごめんね』よりも『ありがとうね』という言葉をたくさんかけてあげてください。これは、子どもが再婚に賛成しているときだけではなく、反対しているときも同じ。『話を聞いてくれたことに“ありがとう”』なのです。その言葉を伝えることで、子どもながらに自分の存在や考えを軽視せずに、考えてくれていることが伝わると思います」

 海老蔵は昨年、自身の公式YouTube『EBIZO TV 市川團十郎 白猿』で、「【4年】母親の大事さ。やっぱり考えるよね」と題した動画の中で、こんな思いを吐露していた。

「子どもたちにとって母親がいないって。(中略)母親ってさ、人によるだろうけど、愛とか温もりって、何ものにも代え難い。でも彼らは味わったことがない、特に勸玄なんかは。母の温もりを。しかも温もりを与えたくない母親もいる中で、麻央は与えたかった人だから。本来得られた温もりを、得られない。戻っちゃうよね、気持ちはね」

 子どもたちとの会話を重ね、よきパパとなった海老蔵。子どものことを思って再婚するのか、子どものことを思って再婚しないのか。その価値観は人それぞれだが、どちらにせよ、“海老蔵パパ”のように子どもへの理解と深い愛情があれば、本人たちにとってはさほど大きな問題ではないのかもしれない。