2  治療薬の開発が進んでいるからワクチンは不要?

 新型コロナの新承認薬も増え、国内での新薬開発も急ピッチで進んでいる。治療薬が増えれば、ブースター接種の必要はなくなるのだろうか。

「新薬については、一般の方の期待と医療現場の現状が大きくかけ離れている部分かもしれません。たしかに昨年12月24日に、モルヌピラビルという飲み薬が認可され、医師としてもやっと武器が手に入ったような気持ちです。ただし、現状では薬局でのストック数は限られています。安定供給がされているわけではないので、処方できる患者さんはどうしても限られてきてしまう」

 十分な体制は整えられていないというモルヌピラビル。一体どんな薬なのか。

「ウイルスの増殖を防ぐ薬で、発症後すぐに飲めば重症化を防ぐ効果があります。ただし、デルタ株に対しての臨床データの結果であり、オミクロン株の患者さんにどう使えばよいかというコンセンサスが得られていないということもあり、処方はなかなか難しいところです。また、入院・死亡リスクを3割程度下げるという薬なので、一般の患者さんが期待するような“これでコロナが治る”というものではありません。ワクチンが不要となるくらい治療薬が出回るには、まだ時間はかかりますね」

3 副反応が強いモデルナは嫌、ファイザーがいい

 ワクチン接種の懸念点である副反応。モデルナ製はファイザー製よりも副反応が強く出るという話もあり、敬遠されがち。

「モデルナとファイザーの大きな違いは、タンパク質の設計図であるmRNAの量。1回の投与量がファイザー製は30マイクログラム、モデルナ製は100マイクログラムとなっています。投与量が多いぶん抗体もできやすいので、抗体をつけて発症を予防するということだけを見れば、実はモデルナのほうが優秀です。しかし、そのぶん副反応も出やすく、特に若年層の心筋炎などの副反応の頻度はモデルナのほうが高いといわれているため、ファイザーを希望する人が多いのだと思います」

 実際に3回目の接種をする場合、ファイザーとモデルナのどちらがいい?

「実際のところは一定以上の抗体がつけば、発症予防や重症化予防率にあまり差はありません。ブースター接種ではモデルナ製ワクチンは1、2回目の投与量の半分の50マイクログラムを投与することになっていますが、それでも十分な効果があります。また、3回目の接種では、過去2回のワクチンとは別の種類のワクチンを打つ、いわゆる交差接種をすると中和抗体量が上がるというデータが出ています。過去にモデルナを打った人はファイザーを、ファイザーを打った人はモデルナを打つと、ワクチンの効果を高められますが、同種のワクチンでも効果は期待できます」