【2】補強工事にもエピソード

 東京スカイツリー専用のLED照明器具は、現在2362台が設置されている。2019年9月から約9か月にわたって大規模なライティング増強工事が行われ、347台が増設された。

東京オリンピックを控え、東京の玄関口である羽田空港からの視認性向上と、より躍動感のあるライティングを目指したリニューアル工事でした

 東京スカイツリーから羽田空港までは約18km。実際の視認実験は、羽田とほぼ同距離の約19km離れた埼玉県越谷市で行われた。

大型トラックをレンタルして、ショッピングモールの駐車場に向かいました。関係先のスタッフみんなでトラックの荷台に乗り、墨田区の東京スカイツリーからの光を確認したんです。光の出力や照明機器の設置台数を決定するため、この実験を5回行いました

 リニューアル工事では、照明機器の増灯だけでなく、LEDの性能もバージョンアップ。従来と比べ、約10倍もの明るさを表現できるようになった。

【3】こだわりの色表現とは

 リニューアル工事前から、ライティングの基本パターンは3種類。水色と白色の爽やかな光が特徴の『粋』。江戸紫をテーマカラーに、金箔のきらめきをゴールドで表現した『雅』。縁起がよいとされる橘色を基調とした『幟』が、日替わりで披露される。

日替わりで変わるライトアップ。夜景に映えるその姿は、まさに“宝石”。新デザイン『雅』
日替わりで変わるライトアップ。夜景に映えるその姿は、まさに“宝石”。新デザイン『雅』
【写真】まるで宝石、東京を優しく照らす「夜のスカイツリー」

 このほか、バレンタインやクリスマス、オリンピックなどの行事では「特別ライティング」が披露されることも。リニューアル工事後は明るさだけでなく、より複雑な色の演出も可能となった。

ライティングデザイナーがイメージした光を忠実に再現できるよう、色の表現にはかなりこだわっています

 従来はR(赤)、G(緑)、B(青)の3種のLED素子を組み合わせて色を作り出していた。リニューアル後は、これにW(白)のLED素子を加えたRGBWの光源を導入。なんと約42億色もの表現が可能に。

各色のLEDに合わせて設計した専用レンズを組み合わせることで、よりきれいな光の色みと高出力を実現しています。カメラ製造の歴史で培ってきたパナソニックのレンズ設計技術が、東京スカイツリーのLED照明でも生きています