他人との縁を切らず、ほどよい距離感を保つ

 ここで気をつけなければならないのは、盲目的に「孤独はいいもの」と思い込み、社会から孤立してしまうこと。望まない孤独は、むしろ心にも身体にも悪影響を及ぼす。アメリカ・ブリガムヤング大学の2015年の研究では、孤独感や社会的孤立、ひとり暮らしは、死亡率を高めるという結果となった。

 であれば、“ちょうどいい孤独”とはどういうものなのか。鎌田先生は、昨年亡くなった脚本家の橋田壽賀子さんとの対談が印象に残っていると話す。

「90歳を過ぎた橋田さんは“夫も亡くなってひとりだけど、私は友達がいないし、いらない”と言っていました。でもよく聞いてみると、社会とのつながりは十分にあったんです。かかりつけの病院のスタッフ、通っていたジムのインストラクター、行きつけのレストランのシェフなど、外に出ればおしゃべりする人があちこちにいた。

 べったりと付き合う人間はいなくとも、社会との緩やかな縁があったんです。修行僧のように他人との縁を断ち切るのではなく、自身はしっかり自立しつつ、自分が気持ちいいと思える度合いで縁を保つ。それが“ちょうどいい孤独”なんです」

 自分にはたくさん友達がいるから関係ない、と思う人こそ、友達との縁は大事にしつつ、ひとりでも楽しめる練習をしておく必要がある。まずは、孤独を否定的に捉えるのではなく、積極的に楽しめるような“ソロ立ち”を目指すのがよさそうだ。

「興味があることを、ひとりで楽しむ勇気を育てましょう。まずはひとり図書館、ひとり映画、ひとり美術館、ひとりランチなどに挑戦してみるとよいでしょう。ひとりで行動すると、自己決定ができるようになり、より自分らしい、新しい人生を生きることができます。まさに、人生の二毛作です」

 夫婦2人暮らしでも“ソロ立ち”の練習は可能だという。

「夫が定年退職したなら、妻も定年退職しましょう。毎日が無理なら、週1回でもいいんです。妻は自分のしたいことをするためにひとりで出かけ、夫は自分の食事は自分で作る。それだけで家の空気が変わります。

 仕事ではきちんとしていても、生活の自立度が低い男性は多いもの。でも夫婦がお互いに少しずつ自立度を高めていけば、いずれどちらかが亡くなってひとりになったとしても、あわてずに生きていけるはずです」