データが示す「飲んでも飲まなくても同じ」

 その他にも2つのグループを公平に設定し、実薬とプラセボを割り当てて行われた試験が少ない。試験の対象者自体少ないといった点も。

※「プラセボ」                                          本物の薬と同様の外見、味、重さをしているが、有効成分は入っていない偽物の薬。薬の治療効果を実験的に明らかにするため、比較対照試験で利用される。

中には、この実験は“症状が悪化しないこと”を目的とした調査のはずなのに、イベルメクチンを飲んだことで“死亡率が62%も下がった”と報告している論文もありました。いまだかつてこの世の中に、プラセボと比較して62%も死亡率が下がるような薬は存在しません。さらに臨床試験を実施した地域が開発途上国に集中していることも問題です

‘12年、ファイザー社がナイジェリアの子どもたちに対し、親の承諾を得ることなくモルモットのように抗生剤新薬の臨床試験を行い、米国の裁判所から賠償金を請求されたという事件があった。

「これらの論文とは別に、世界的に知られた権威ある医学誌に掲載された論文が3つあります。いずれも結論は同じで“プラセボとの間で有意差なし”というもの。この場合の有意差とは、発熱などの初期症状が治まるまでの日数に差があるのかないのかという意味です」

 3編のうちの1つを例に出し、解説する。こちらは『JAMA』という、米国医師会が刊行する国際的な査読制の医学雑誌。世界で最も広範に読まれている医学雑誌とされている。『JAMA』にて《Effect of Ivermectin on Time to Resolution of Symptoms Among Adults With Mild COVID-19)》というイベルメクチンに関する研究が発表されている。《新型コロナウイルス感染(成人・軽症)におけるイベルメクチンの症状消失までの時間への影響》というものだ。

イベルメワクチン症状消失までの時間への影響をあらわすグラフ
イベルメワクチン症状消失までの時間への影響をあらわすグラフ
【写真】「撮るんじゃねぇよ!」警察に連行中もカメラに威嚇するASKA

「グラフの横軸は、薬またはプラセボを飲み始めてからの日数。縦軸は症状が回復した人の割合(累積)です。オレンジ線がイベルメクチンを飲んだ人、青線がプラセボです。グラフを見ればわかるように、両者で同様の線を描いている。つまり、症状が治ったと申告した人の割合がイベルメクチンとプラセボで同じだったということです。飲んでも飲まなくても同じということです。飲んでも何のメリットもない。

 効果があるとする論文も、それをメタ解析した論文も、第三者として公平な目で見ている研究者は、ほぼ例外なくずさんさが目立ち、信用できないという結論を下しています」

 さらに、イベルメクチンについて触れなければいけないことがある。副作用についてだ。アメリカで医薬品や医療機器、また食品などを取り締まる『アメリカ食品医薬品局(通称FDA)』が注意喚起を行っているという。

アメリカでは家畜用のイベルメクチンが簡単に手に入るそうです。それを飲んだ人に重い副作用が出て亡くなった人、痙攣を起こし失神した人など実例が挙げられ、“危険だから推奨しない”としています。副作用としてはその他に、吐き気、嘔吐、下痢など。また医師に対してもコロナの治療目的で処方しないようにという勧告が出されています

 ちなみにASKAはイベルメクチンによって感染予防が出来ていると説いている。症状を抑えるのではなく、予防に効果はあるのか?

予防できることを証明したデータは1つもありません。もし仮に予防できるとして、いつ飲むのか。いつ感染するかわからない。明日感染するかもしれないし、しないかもしれない。先ほど話したように強い副作用がある薬をずっと飲み続けるのか。予防のために飲むことは絶対にやってはならないことだと私は考えます。現状、効果は認められていませんし、極めてハイリスクです」