出ては消えるを繰り返す紅茶の炭酸飲料

 そもそも「ジュース」とは、厳密には100%果汁のもののみを指すが、この記事では一般的なソフトドリンク全般をジュースと呼びたい。日本に初めて登場したジュースは1853年のペリー来航とともにやってきたレモネードだと言われている。その後も甘酸っぱい柑橘系の飲料はジュース界の定番商品となった。

「もう1度飲みたいレモン飲料といえば、カルピスが発売していた『B&L』です。ビター アンド レモンという名のとおり、レモンの苦みを生かした大人向けの味わいが特徴でした。缶のほかにビン入りも売っていましたね」

 また、ホットで楽しめるのも柑橘系飲料の魅力。特にサントリーの『あったまるこ』は思い入れが深いという。

「キンカンとカラマンシーという柑橘類を使用したドリンクで、ホットで飲むジュースはレモネードぐらいしかなかったので、新鮮でした。甘さ控えめでおいしく、その後発売された『なっちゃん』と同じデザイナーによるパッケージもかわいかったですね」

 なかなか定着せず、現在も出ては消えるを繰り返しているのが、紅茶やコーヒーの炭酸飲料。なかでも『ジャズイン』は印象的な1本だ。

“誰でもオイシイ成人飲料”というキャッチコピーでペプシコから1990年に発売された、紅茶を使った炭酸飲料『ジャズイン』
“誰でもオイシイ成人飲料”というキャッチコピーでペプシコから1990年に発売された、紅茶を使った炭酸飲料『ジャズイン』
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「“誰でもオイシイ成人飲料”というキャッチコピーでペプシコから1990年に発売されました。紅茶を使った炭酸飲料で、甘さを抑えてスッキリ飲める味わいでしたね。紅茶やコーヒーの炭酸飲料は今でもたまに発売されていますが、なかなか定番商品が生まれていません」

 当時の飲料メーカーは自社の自動販売機を多く持っていたため、少し挑戦的なドリンクを開発する余裕も販路もあったと清水さんは分析する。個性的な自販機や地方にしかないメーカーの自販機もあり、それらの商品を眺めるだけでも新しい出会いがあった。なかでも特に思い入れが深いのが、『花紅茶』だという。

「今は飲料事業から撤退してしまった日本たばこ産業が発売していた無糖の紅茶です。いわゆるローズティーで、ほのかなバラの香りをよく覚えています。私のまわりではJTの自動販売機でしか売っていなかったので探すのは大変でしたが、無糖の紅茶は当時は珍しく、食事のときなどにもよく飲んでいました」

 もうひとつ、よく飲んでいた紅茶ブランドとして挙げてくれたのが、女性向けのかわいらしい商品デザインが魅力の『ピコー』だ。

紅茶ブランドとして女性人気が高かった『ピコー』
紅茶ブランドとして女性人気が高かった『ピコー』

「パッケージデザインだけでなく、CMもとにかくかわいかった。マザーグースの早口言葉を歌にのせて、女学生風の外国の女の子が軽快なステップで踊るという内容で、“ピコー”と言いながら片足を上げたポーズをとるのが大流行していましたね」

 現在でも手に入る、懐かしジュースもある。サントリーの『はちみつレモン』だ。

「1986年発売の大ヒット商品なので覚えている方も多いはず。“はちレモ”なんて呼ばれていましたが、平易すぎる一般名称のため商標登録ができず、類似商品が多く販売されました。当時は缶でしたが、現在はペットボトルで度々再販されていますね」