福祉事務所の対応改善を願う

 嫌がらせとしか思えない面談が続くうちに、Aさんは傷つき、尊厳を削られ、やがて福祉事務所に行く日には不眠や動悸に悩まされるようになった。ケースワーカーと向かい合うと手が震えた。体調は悪くなり、福祉事務所が鞭打つ「自立」が遠のく。一体、なにをしてくれているのか。

 福祉事務所も、支援団体も、生活困窮した当事者一人ひとりのためにある。その人たちの暮らしや命を守るために存在している。

 生活保護の要件を満たす人間を、あの手この手で追い払うことでもなければ、休息と治療が必要な人間に、早く生活保護を卒業せよと鞭を打ち続けることでもない。利用者を生かすも殺すも自分次第と権力を振りかざすことでもなければ、相手をとことんやり込めることでもない。

 一人ひとりと信頼関係を持ち、丁寧なケースワークをするのは構造的に難しい現状はあるが、それでも、一人ひとりの生活を支える大切で尊い仕事だ。そして、その仕事は公務として為されている以上は、自治体間格差があってはいけない。

 この記事を書くにあたり、Aさんご本人やNPO法人サマリアの黒田氏から直接お話を伺い、また法務省、埼玉県庁福祉部生活福祉課担当者、狭山市福祉課課長には電話取材をした。Aさんの担当ケースワーカーと2名の査察指導員とも直接お会いした。

 狭山市役所の人々は、誰もかれもが判で押したように「自分の名前は出るのか」ということを気にしており呆れた。気にするべきはそこではない。なぜAさんの気持ちを気にしてくれなかったのだろうか。

 チーム狭山は、自分たちの対応の悪さをこれ以上誤魔化したり、認知や事実を歪めたり、支援団体を無視するのではなく、協力してAさんの生活再建を手伝うために力を尽くしてほしい。

 音声データを聞いて、人をバカにしたような態度やごまかし、論点のすり替えに筆者まで気分が沈み、差別というものの破壊力を思い知った。これを浴びせ続けたAさんに真摯に謝罪してほしい。そして、組織全体の問題として、対応の改善に乗り出してほしい。そこにエネルギーを使ってほしい。

お願い
 狭山市役所に抗議の電話をかけると、本件に関係のない電話受付の職員や、福祉事務所職員あるいは利用者にしわ寄せがいってしまいます。ともに福祉事務所の対応改善を求めてくださるのでしたら、メールかFAXで市や福祉事務所に要望を伝えてくださいますよう、よろしくお願いいたします。


小林美穂子(こばやしみほこ)1968年生まれ、『一般社団法人つくろい東京ファンド』のボランティア・スタッフ。路上での生活から支援を受けてアパート暮らしになった人たちの居場所兼就労の場として設立された「カフェ潮の路」のコーディネイター。幼少期をアフリカ、インドネシアで過ごし、長じてニュージーランド、マレーシアで働き、通訳職、上海での学生生活を経てから生活困窮者支援の活動を始めた。『コロナ禍の東京を駆ける』(岩波書店/共著)を出版。