私事だが、今、あるテーマで取材を進めている。経済的に不安定でどこか他力本願、どうにもこうにも心配な「ふがいないきょうだい」について、である。実は、このテーマにドンピシャな人物が、朝から出てきてわなわなしている。ネットでも「クズすぎる兄」と話題なので、わなわなしているのは私だけではないようだ。

 朝ドラ『ちむどんどん』のニーニーの話だ。

ニーニーのクズ伝説

 ニーニーとは、ヒロイン・比嘉暢子(黒島結菜)の兄・賢秀。演じているのは竜星涼だ(少年期は浅川大治)。沖縄の山原地域で暮らす比嘉一家は、決して裕福ではないサトウキビ農家。父・賢三(大森南朋)は、家族6人が仲良く暮らしていけるよう、働きづめで借金をしてまで家を建てた。

 ところが若くして急逝。母・優子(仲間由紀恵)と4人の幼い子どもたちは一気に困窮。銀行に400ドル、さらには大叔父(石丸謙二郎)から100ドルの借金がある状況で、稼ぎ頭を失う悲劇。保証人にもなっている大叔父は、家を手放すことで返済を迫るが、母が朝から晩まで働いて返す約束でなんとか免れる。

 子どもたちの新しいズックも体操服も買えないほど貧しいが、この一家はなんだか楽天的である。父亡き後、身を粉にして働く母。昭和30年~40年代、返還前の沖縄の厳しい現実を描いていたのだが、いや、ちょっと待て。基本、明るく・くじけず・つつましやかな「清貧」を見せるものの、ひとりだけ厄介なのがおる。ニーニーだ。

 ニーニーは幼少期から調子よくて後先考えず、問題児ではあった。母の苦労を目の当たりにしても、基本的には怠け者。賢秀の名が聞いて呆れるほど、賢くも秀でてもいない。日常生活で必要なズックよりも、無駄なおもちゃ「マグネットオーロラスーパーバンド一番星」(要はヘッドバンド)を欲しがるあさはかさ。子どものころならまだしも、その後もまったく成長をみせないニーニー。

 ボクシングと喧嘩に明け暮れ、高校は中退。名護や那覇へ働きに出るも長続きせず。地元の架設現場で働くも、給料を前借りした挙句、2時間でやめてしまう(その給料は一晩で酒代に消えた)。喧嘩っ早く、トラブルを起こしては酒を飲んで酔いつぶれる。ここ最近の朝ドラに登場した家族の中でも3本の指に入るクズである。ちなみに、もう2本は『おちょやん』の父(トータス松本)、『カムカムエヴリバディ』の兄(濱田岳)な。

 さて、ニーニーのクズ伝説はまだ続く。釣りをしていた若者たちを殴って、警察沙汰を起こす。ただし、これには理由があって、地元のおばあを突き飛ばした若者たちを咎めたのだが、話はそこで終わらず。

 よりによってその若者は、暢子が就職する予定だった会社社長の息子。暢子の就職が危うくなるも、ニーニーは謝りに行かず。もう嫌な予感しかしない。「こりゃあ、ニーニーのせいで一家が路頭に迷うのではなかろうか」と。

 その後、アホしかひっかからんような儲け話を持ち掛けられ、母に借金させてまでかき集めた960ドルをつぎ込んだ挙句、詐欺師にまんまと逃げられるニーニー。やけ酒して、ハンバーガーショップで大暴れ、器物損壊の賠償は母が請求される。暢子が東京へ行くはずだった話も当然、立ち消えに。そのくせ、悪びれることもなく「腹減った~」と大の字に寝て、メシを要求する図々しさ。「明日は明日の風が吹くって!」と開き直る。もう、イラつきが止まらない!!

 下がり眉毛と逞しい二の腕、やさしげな二枚目の竜星涼(歌声は西城秀樹風)は熱演しているし、適役なのだが、私の中ではニーニーに対して憎悪すら感じてしまう。

 しかもだな、翌日には「部にして返す!」とメモ書きを残して行方不明に。逃げるんだよ! 借金こさえて、家族を散々な目に遭わせておいて! ちなみに「部にして」は「倍にして」のつもり。漢字すら書けないニーニーに絶句してしまった。