プロになってからお世話になっている小田和正さん

「プロになってからいちばんお世話になっているのは小田和正さん。とにかく声のコントロールが抜群で耳がいい人。“鼻歌ですら”揺るぎないピッチで歌ってくれます(笑)。初めてお会いしたのは、'96年の熊本でのオムニバスの野外ライブでした。そのときに“スタ☆レビがトリをやってくれ”と頼まれました。理由を聞いたら、そのときの小田さんはバックバンドを連れていかず、“最後が弾き語りだとお客さんは喜ばないだろう”と。その流れで、僕らがトリの小田さんのバックバンドをやることになり、『オダ☆レビ』というユニットが始まりました」

 小田が20年以上にわたって続けている音楽特番『クリスマスの約束』(TBS系)、通称『クリ約』でも多く共演している。

『クリ約』は何年も出させていただいていますが、勉強になることばかり。音楽がどうやったらよりよいものになるかという取り組み方も素晴らしいですし、オリジナルへのリスペクトを崩さずに“小田流”に仕上げていくところも素晴らしい。誰もが、誰かの影響を受けて音楽を始めているわけですから、そういう人たちにどれだけの敬意を持って音楽ができるか。敬意がない人たちの音楽は“ただ売れればいい”という音楽にしか聞こえません。自分が聞いてきた音楽に対するリスペクトがあったうえで、自分なりに新しく作る。小田さんの考え方には、いつも学ばされますね」

 それを間近で見ている根本は、自身の楽曲がカバーされることはどう感じるのか。

『木蘭の涙』はたくさんの方にカバーしていただいていますが、なかには“あれ? オリジナルを聴いたことないのかな?”ってカバーもありますよね。やっぱり原曲へのリスペクトはとても大切だと思います。最初にカバーしてくれたのは佐藤竹善とコブクロ、最近も鈴木雅之さんが歌ってくれていますが、僕よりうまくて困りました(笑)。原曲はバンドでの演奏ですが、アコースティックバージョンがよく歌われます。あれは『クリ約』で小田さんから、“シンプルにピアノだけで俺と2人でやろう”と。それがきっかけで『木蘭の涙』のアコースティックバージョンが生まれました。小田さんとの『木蘭の涙』に新しいスタ☆レビが見えました」

スタ☆レビ根本が目指す野望

「芸能界とか音楽界において“売れる”というのは1つのキーワードです。でも、“こうすれば売れる”とか、“こういう曲を出せば売れる”という鉄則はなく、運とか結果でしかありません。なのにそこに命がけになるのは、僕はどうしても解せない部分があって。“とにかく音楽が好きだから売れなくても続けていきたい”そんなミュージシャンだっているはず。だからこそ、僕らみたいなバンドが堂々と“全然売れてないけど、全国にお客さんがいるぞ”と活動するのも、音楽業界に提案できる1つのあり方だと思っています」

 それには、“ヒット曲”への考え方が影響している。

「僕らは全国のホールでちゃんとお客さんが入るようになったけれど、本当にヒット曲はないんです。でも長いこと歌っていると、世の中の人が勝手にヒット曲のように感じちゃうらしく、実際は『木蘭の涙』だって20位くらいで、『今夜だけきっと』は50位にも入ってない。だから最近は“ヒット曲でもないのに知られてる曲がある”って自虐的に言ってます(笑)。本当にヒット曲のないバンドなんです。でも、世の中の人たちはそこに価値を見出す。ありがたいことに今回こうやってインタビューしてもらっていますが、僕らはただのマニア向けバンドかもしれません。でも音楽は、マニアックに聞いてくれたほうが、それまで知らなかった音に出会えたりするんですよ。僕自身も“もっとマニアックに音楽を聴こう”と思います。時代と共に薄れる曲よりは、“あなたの中でのヒット曲を作ろうよ”と。売れた曲を“ヒット曲”と呼ぶより、心を叩いてくれた曲を“ヒット曲”と呼んでほしいですね」

 だからこそ、“売れそうな曲”ではなく“やりたい曲”をつくり続ける。

「だからといって、お客さんを無視するんじゃなくて、“僕らがやりたい音楽はコレ。でもこれをどうやったらお客さんが楽しんで聞いてくれるんだろう?”と、いつも考えてます。“コレ絶対売れるでしょ”という曲は作ったことがないし、作れるとも思っていません。僕らの意思の中から出てきた音楽を、どうやったらお客さんは喜んで聴いてくれるのか。ライブも含めて、自己満足にならないよう、絶えずお客さんを意識しています

 最終的な野望は……。

「“あんまり知られてないけどあのバンドはお客さん入るよね”というようなことをやり続けて、“売れないけどスタ☆レビみたいに40年食えるならいいじゃん”と思ってくれる人たちが出てくれたらいいなと思います。昔“渋谷系”というジャンルがありましたが“スタ☆レビ系”みたいな(笑)。“スタ☆レビ系”っていうのもなんだかおこがましいから“継続系”“地味系”かな。そういう後輩バンドが出てきてくれたらうれしいですね」