はじめはコンプレックスがあった

「自分の歌声が嫌で嫌で仕方なかったんです。でも“自分で曲を書いているから、自分で歌わないと”と思ってやり続けて、デビューして7~8年たったら“スタ☆レビはボーカルがいい”とも言われるように。それまでは、下手くそで申し訳ないって思っていたくらい」

 その後、デビュー20周年を迎える'01年に所属事務所から独立した。

「それまでは『アップフロントエージェンシー』という、モーニング娘。などが所属している事務所にいました。最初はスタ☆レビと堀内孝雄さんとばんばひろふみさんしかいなかったのですが、その後森高千里さんやKANちゃん、シャ乱Qなどがガンガン売れて、それでも僕らは蚊帳の外で(笑)。“もう20年も所属しているし、この先は自分たちのやり方でスタレビを運営しよう”と、社長に言って独立させてもらいました」

 独立をきっかけに、大きな変化が。

「音楽のことだけを考えていけるようになりました。それまでは、売れるためのことを考える必要がありましたが、独立して初めて、スタッフも僕らのことだけを考えてくれるようになった。もちろん、独立する前もマネージャーさんやスタッフから愛情をもらっていましたが、事務所にはたくさん売れている人がいたからそういう人のケアもしないといけないし、僕らもそれが当たり前だと思ってましたから」

 楽曲も変わっていった。

「“今の自分たちをストレートに”を歌おうと思うようになりました。それまでは、やりたいことをやりながらも、どこかで売れるための曲を考えていたんでしょうね。独立してスタッフとミーティングを重ね、売れることより“これがスターダスト☆レビューだから”という曲を作ろうと

 そして、バンドは40周年を迎えるほどになり、ついには“売れたくない”という境地にたどり着いた。

「今が僕らにとっていちばん幸せだから、変に火なんかついちゃったら大変(笑)。このくらいがちょうどいい。僕らより売れながら40年解散していったバンドをたくさん見てきました。でも、僕らはこのバンドが好きだから、もっと継続させたい。僕らが40年続いたいちばんの理由は、売れなかったことかもしれない。だったら、このままでいたいなと。スタッフも含めて、すごく幸せに音楽をやれています

そんな幸せな環境で、最も力を入れていること

「音楽は、聴いてくれる人がいるから成り立つわけですが、CDが売れることもその指標のひとつ。ですが、聴いてくれる人をダイレクトに感じられるのはやっぱりライブです。だから、僕はとにかくライブがしたくて。今回のツアーは、40周年ということで、1年4ヶ月かけて102公演、全国を回りました

 並大抵じゃない公演数をやり遂げるには、相当な努力が要りそうなもの。

ライブ後に疲れきってしまったり、歌が最後まで歌えなかったりしたら、“あれ、体力足りてないのかな”と思いますが、それを解消するための行動は、僕にとって努力でもなんでもないんです。だって、とにかくライブがしたいから。最近では、暇があると嫁さんとウォーキングに行ったり、ストレッチをしたりしています。気をつけなきゃいけないことはこれからもっと増えるかもしれませんが、年齢とうまいこと付き合っていくのがいちばんいいかな、と思っています」

 それは、体力においてだけではない。

「もちろん喉の変化もありますから、30歳のころの歌をそのときと同じようには歌えません。でも、30歳のころに歌えなかった歌を今歌えるようになるのなら、そのほうがいいなと思うんです。“今の声でどれだけ僕らの音楽を伝えていくか”を考えていて、ダメになる部分をダメなものとするのではなく、うまいこと装飾して見せようとしています。そのほうがお客さんも納得してくれますしね。それがただの劣化として扱われたら、僕らのお客さんはいなくなると思いますし」

 では、そこまでライブにこだわるのはなぜか。

「僕らにはそれしかなかったからです。レコードが売れるわけでも、テレビに呼ばれるわけでもありませんでしたから。ミュージシャンとしてのプライドを保つためには、とにかくライブをやることだと思いました。それで“とにかくライブを入れてくれ”とお願いして、1年中ライブをやるようになりました。でも、もしヒット曲が出ていたら、違っていたかもしれません。テレビや取材に忙しく、そこからツアーをやって、さらに短期間で次のアルバムを作って……とか」