「次の世代へ継承したい」

 売り上げの一部は、公益社団法人日本ユネスコ協会連盟に寄付される。寄付先をユネスコ協会連盟に決めたのも、開発メンバー全員の強い思いがあったという。

「いろいろな団体に直接お邪魔して寄付の使い道を確認しました。そのなかでいちばんしっくりきたのが、日本ユネスコ協会連盟さん。ユネスコ憲章の前文『戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない』という一文が響きました」 

 言葉を詰まらせながら、八木野さんはこう続ける。

「圧倒的なんですよね、鶴を目の当たりにすると。ひとつひとつの重み、折った人の思いが伝わってくる。折り鶴って、作るの大変じゃないですか! 私なんて不器用なので全然うまく折れなくて(笑)。こうしてカラフルウイッシュRができるのは、1羽1羽、心を込めて折り鶴を折った人がいるから。じゃあその願いってなんだろう、と考えたときに、いちばん祈りが届くような形で、未来を担う子どもたちにつなげていきたいと思いました」

千羽鶴から生まれた商品たち
千羽鶴から生まれた商品たち
【写真】千羽鶴の紙から作られた商品たち

 色や形は違っても、鶴に込める思いはきっと同じ。昨年12月からは、新たに長崎市に届いた折り鶴も使用されることになった。八木野さんはこの再生紙にこんな思いを託している。

「最近は被災地や戦地に送ることが問題視され、千羽鶴に対してネガティブな見方もありますよね。もちろん受け取る側の事情を考慮することが大前提ですが、千羽鶴は祈りを届けたい、という純粋で温かい気持ちから生まれるもの。それは忘れないでおきたいなと思います。今後さらにカラフルウイッシュRを目にする機会が増えて、平和を考えるきっかけとなり、広島、長崎への思いが次の世代へ継承されればうれしいです」

 文字が似ているだけでなく、「折る」という行為は「祈る」ことに似ている。折り鶴に託された祈りが、この思いをはらんだ再生紙を通じてあなたのもとに届くこともあるかもしれない。


取材・文/片岡あけの(清談社)