とはいえ「密」を好むスタンスはお笑いに役立つものでもある。そこで思い出されるのが、NHK Eテレの『Rの法則』(2011~'18年)だ。ジェシーや田中樹、高田夏帆、ほのかりんといった若手タレントが多数出演した若者向けバラエティーで、TKOはコント企画の常連だった。

 この番組の魅力は、10代後半の男女たちが「密」になり、和気あいあいと繰り広げる空気感。ネットでは、誰と誰とが付き合っているのではという話題も盛り上がった。そんな空気感に大人世代ながら溶け込んでいたのが、司会の山口達也であり、TKOだったのだ。

 しかし、山口が出演していた女子高生タレントに対し、強制わいせつ騒動を起こしたことで、番組は終了。その2年後にはコロナ禍が到来して、こういう「密」な番組作り自体、成立しづらくなった。いわゆるコンプライアンス的にも「密」な距離感は嫌われがちな状況だ。

 そんななか、TKOが去っていくのもある意味、象徴的である。なお、サンドウィッチマンの伊達みきおによれば、木本は、

「巻き込まれたんや。反省と後悔の日々や」

 と、ぼやいていたという。ただ、木本は巻き込んだ側でもあるわけで「密」を好むタイプの人は常にリスクを覚悟しておかなくてはいけないのだろう。

 また、伊達は芸能人が投資にハマりやすい理由を「何があるかわからない世界だから」と指摘。収入の不安定さを投資で補おうとする人がいる、という意味だ。

 そのあたりが、芸能人もまた水商売だと呼ばれるゆえんだ。そういえば、ある種の猥雑さが味になるという点で、芸人の世界はキャバレーやスナックなどの接待系飲食業にも通じるところがある。

 TKOを地上波のテレビで見ることは当分なさそうだが、どこかの店で木本が『さいなら』を歌うところに遭遇したら、ちょっと泣けるかもしれない。

PROFILE●宝泉薫(ほうせん・かおる)アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。近著に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)