499人――。

 これは、2020年に自殺した小学生から高校生までの合計数だ。1980年以降、過去最多となり、2021年はそれに次ぐ473人に。

 子どもの自殺が相次ぐが、先立たれた遺族の苦しみは想像を絶する。6年前亡くなった少年の遺族が、その思いを語った。

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 まだ日が昇らない、夜明け前のことだった。気づかれないようそっとドアを開け、外に出た。暗闇のなか自宅の敷地内にある小屋に入るとロープを結び、その反対側を自分の首に結んだ。まだ、幼さの残る12歳の少年は、そのとき何を思っていたのか――。

 2016年8月19日。青森県東北町で当時、中学1年生だった楢舘拓実(ならだてたくみ)くんは自ら命を絶った。新学期が始まる3日前のことだった。

「つい最近、近所に住む同級生の子が、若葉マークをつけた車に乗って運転しているのを見たって夫が話していたんです。生きていれば、拓実も18歳。高校を卒業して車の免許を取っていたのかな……」

 拓実くんの母・江美(えみ)さんはそう話し、苦しそうに眉間にしわを寄せ、目を細めた。
 
「形だけでも傍に置いておきたいと思っていましたが、2019年に義父が亡くなり、拓実の骨も一緒に納骨したんです。お寺さんからは、早く入れなさいと言われていましたし、すっごく可愛がってくれたおばあちゃん、おじいちゃんも一緒だから大丈夫かなって。でも、ずっと近くにあったから、寂しいですね」

 6年という月日が流れ、今年で7周忌を迎えたが、愛する息子の死を、今も受け止めきれないでいる。

いじめがなければ、もっと生きていられた

 拓実くんが残した遺書にはその原因が、明確に記されていた。

《いじめがなければ“もっと”生きていれたのにね……ざんねん》

 と。にもかかわらず、調査に乗り出した『町いじめ防止対策審議会』は、拓実くんの自殺について“いじめは一因”としたうえで“本人の特性”や“思春期の心性”など“さまざまな背景が複合的に関与していた”と結論づけた。

 この結果に両親は絶句。

「教師って子どもが好きで、誠実な人が就く職業だと思っていました。でも、ウソばっかり。拓実が“学校に行きたくない”“死にたい”と話した言葉を聞いて、私は学校に何度も電話をして、訪問もして相談していました。なのに、なんら対応してくれないばかりか、私が相談したこと“すらなかったこと”や“ウソ”で塗り固められていました。『審議会』の聞き取り時に渡された資料にあった学校側の証言は、三者面談の日に私が拓実の前で“息子が死にたいと言っている”と相談したという内容でした。息子の前で、そんなこと言うわけないのに……」(江美さん、以下同)

 遺族の反発を受け、町は、再び調査を実施。2018年3月に、調査結果を公表した。報告書では、拓実くんの自殺は、後ろの席の同級生から何度もイスを蹴られた“いじめが原因”であると認定し、学校が適切に対応していれば防げていたと非難した。

「これでも納得いく内容かというとそうではありません。“イスを蹴った”といういじめだけが認められ、ほかのことはわからないままなんです。なぜ息子が死んでしまったのか、本当のことを知りたいのに……。拓実の遺書には、いじめた子への強い憎しみが書かれていました。そうとうなことがあったはず。なのに、当事者は誰もちゃんと話をしてくれなかった……」