人間は、そんなに簡単には変わらない

 よく年をとると凝り固まってくるっていうじゃないですか(笑)。だから、自分自身にそう言い聞かせてるんです。でも、言い聞かせるってことは柔軟じゃなくなってきてるのかもしれないけど(笑)。

 僕のステージをご覧になっていただいた方はわかると思うんですが、アップテンポのナンバーからバラードまで、過去の'70年代のナンバーから現在まで立体的に歌っていくわけですよね。ある意味、「いろんな歌をうたえなければいけない。そうありたいな」と、常々自分の中で意識していることなんです。その「意識する」ということが僕の中では大事なことで、何をするにも意識づけて、その意識がいつのまにか無意識に変わっていけばいいな、と思ってるんです。

 でも、実はそれって何年もかけてなんですよ。人間は、そんなに簡単には変わらないんですよね。もう本当に何年も、あるいは10年、20年という単位になってくるかもしれない。でも、僕の中ではそういうものだなっていう覚悟ができてるというか。だから、今、変わろうと思っても、「何年かかるな」って。でも、そうやって時間をかければ、きっと自分はできると思ってるんでしょうね。

 今の僕はそんなふうに何十年もかけて「こうなりたい」と思ってきた自分に近づいてるのかもしれない。10代、20代の自分にできなかったことが少しずつ、「これかな」ということがわかってきてるんじゃないかなって。

 結局、歌手として本質は何かというと、「歌がうたえること」なんですよ。だから、芝居ができる、話ができる、衣装がこうだ、ライティングがこうだ、動けるとか。それは実は二次的要素なんですよ。

「歌がうたえること」以外は、極端なことを言うとごまかす道具でしかないんです。

 だから、僕は何もない生身の身体ひとつであっても「歌がうたえる」というところにいきたかった。そのうえで、衣装や動きなどが武器になるんです。その違いにあるとき気づいて。やっぱり歌手である以上は、歌しかないな、と。

 その積み重ねが、今の50周年のステージにつながってるんでしょうね。

 僕は、トレーニングも30歳ごろから始めて、もう40年近くになるんですよ。実際、どうしてそんなに長く続けられるのかと聞かれると、人それぞれ体力も体形も、志も目標も違うから、一概には言えないけれど、ひとつには、目標設定を高くしすぎないことが大事だと思うんです。

 例えば僕の場合、「郷ひろみをずっと続けていきたい」という漠然とした大きな目標があるけれど、もっとハードルを下げてもいいと思うんです。わかりやすく言うと、背伸びして手が届くところが目標です。ジャンプして届く距離じゃないですよ。それは高すぎるんです。だから続かなくなっていく。背伸びして届く目標だと、人間は「こんなもんか」と思う。でも「こんなもん」を毎日続けていくことが大事なんです。

 それと、これは僕がいつも思うことなんですけども、何かを始めるときは、自分の中に懐疑心だったり、恐怖心が生まれる。「大丈夫かな?」ってちょっとひるんだりする。

 そういう気持ちを持つことって、僕はすごく大事だと思うんです。なぜなら慎重になって、ものすごく考えるから。そして、その恐怖心を上回る勇気を持ったときに、「行くぞ!」と思うタイプなんです。

 「絶対にやる」。それは僕が決めてることです。