ファンのみなさんが僕を郷ひろみにしてくれる

 郷ひろみを50年やってきて思うことは、「ひとりの力じゃ絶対無理だったな」って。それは痛感しますよね。多くの人に支えられなかったら、とてもじゃないけど、立っていられなかっただろうなって。

 若いころはそんなふうに考えられなかったんです。それは、おごっているということではなくて、あえて考えなかったし、突き進んでいたからかな、とも思うし。

 僕はレコードデビューしたのが、1972年の8月1日ですが、その前の1971年にファンクラブが発足されて、その時からは51年になるんですよ。それからずっと支えてくださってるファンの存在って、めちゃくちゃ大きいなって痛感します。

 今、50周年のツアーをしていますが、それぞれ人間は生きていると、いろんなことがありますよね。そんな中で、会場に足を運んでいただいた方たちにとって、あの空間、あの時間が異次元、異空間になるように。そういう世界を提供できればいいな、と心がけています。

 不思議なもので、ステージに立つと、お客さんが僕を郷ひろみにしてくれてるんだろうなっていう感覚があるんですよ。べつに自分を変えていこうとか、郷ひろみになろうと思わなくても、あそこに行けば、いつもどおりの郷ひろみがきっといるんだろうな、という感覚ですね。

 この先のことを考えたとき、実はまだやってないこともたくさんあるんですよ。今回、50周年を記念して出す108枚目のシングル『ジャンケンポンGО!!』はロックなんですけど、今まであんまりロックって歌ってなかったなって。ジャンル分けするのは好きじゃないけど、表情もいろんなことを含めて、こういうのはやってなかったなって。

 タイトルはいろいろ考えて、ジャンケンポンって老若男女誰でも知ってるし、これしかないなって。べつに50周年だからって、「人生、」とかつける必要ないし(笑)。僕にとっては深く考えたタイトルです。

 50周年ツアーを収めたライブアルバムも同時に出るんですが、ご覧になった方は聴くだけで「あのシーンだ」ってビジュアライズできるかな、と思うし。1枚目をアップテンポ、2枚目をバラードにしたので、「今日はアップテンポの気分」「今はバラードの気分」と聴き分けてもらうのもいいかな、と思います。

 ドラマでも、『定年オヤジ改造計画』のお話をもらったとき、最初は僕が定年オヤジをやるのって人が見たときにどういう意識になるんだろう? と思って(笑)。でも、それは僕の力次第で変わるかもしれないな、やってみようと思ったんです。

 僕の中にあるチャレンジ精神が呼び起こされるというか。もともとイメージしにくいとか、やりにくいと思うほうに興味が湧くんです。だから、コンサートでも、アレンジを変えていきたいし、僕は常に変わっていきたいんですよ。

 そもそも、変化の先にしか進化はないと思ってるんです。自分を変化、変化、変化させて、その先に進化がある。自分を進化させるには変えていくしかないんです。

 もし、もう一度生まれ変わるなら、まずは間違いなく日本人がいいよね。それは外国を見てきたからこそ思える、素晴らしさでもあります。そして、郷ひろみをもう一回やってみるのも手だよね(笑)。

 ほかの職業もみんな魅力的だけれど、やっぱり僕は自分が持っているものすべてを懸けてステージに立っていたい。僕には、この仕事しかない。郷ひろみであることがベストだろうな、と思います。

ごう・ひろみ 1955年10月18日、福岡県出身。1972年8月1日に『男の子女の子』でレコードデビュー。108枚目のシングル『ジャンケンポンGO!!』がリリースされたばかり。50周年記念ツアーが12月まで開催中。

取材・文/相川由美 ヘアメイク/辻元俊介(スリーピース) スタイリング/JOE