マイクロ農業で晴耕雨読の町おこし

 森永さんが実践する「マイクロ農業」は町おこしにもひと役買っている。富山県中新川郡にある舟橋村が好例だ。

マイクロ農業を取り入れている富山県の舟橋村。都市で働くサラリーマン世帯を呼び込んだ
マイクロ農業を取り入れている富山県の舟橋村。都市で働くサラリーマン世帯を呼び込んだ
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「舟橋村は人口3000人。日本でいちばん面積の小さい村です。村内には、工場が1つあるだけで、農業が主体となっていました」

 財政状況は厳しく、何度となく周辺市町村との合併話が持ち上がったが、村の人々は「自分たちの村は自分たちで守る」と、合併を拒否したのだという。

 そんな舟橋村の人口は意外にも増え続けている。1985年には1419人だったが、2015年には2982人とほぼ倍に。舟橋村は県庁所在地の富山市に隣接していて、富山駅までは富山鉄道の越中舟橋駅から5駅、15分の距離。富山市の人口増加に伴いベッドタウンとしての需要が高まったためだ。

 加えて、遊休農地を活用した農業施策も評判を呼んだ。

「舟橋村では高齢化で離農する農家が増えていました。そこで、村が遊休農地を借り上げ、細かく区分してサラリーマン世帯に貸し出したんです。富山市で働くサラリーマンが週末になると、村が指導して細分化した農地を耕しているんですよ」

 実際にプロの農家に、農作物の作り方を指導してもらうプログラムもある。さらに舟橋村では「文化振興」を最優先政策に掲げている。

「村長は駅に隣接した、どでかい図書館を建てたんです。県からは分不相応と批判されたそうですが、そのおかげで住民1人当たりの貸し出し冊数は年間29冊と、日本一に。立派なホールもあり、各種の催しものが開かれ、住民もよく参加しているんですよ。舟橋村は、住民の文化・教養のレベルを上げていけば人口は増えていく、ということの見本といえますね」

 都市で働いて、短時間通勤で緑に囲まれた自宅に帰る。そしてきれいな空気の中で農作業に汗を流す。

「雨の日には図書館で本を借りて読書にふける。まさに晴耕雨読なんですよ」