冷笑も炎上も祭りを盛り上げるため

 なぜSNS上は冷笑であふれるようになったのか。ネットでのコミュニケーションについて20年以上にわたり取材を行ってきた、中央大学講師でジャーナリストの渋井哲也さんが解説する。

「ネットの冷笑文化のルーツは1999年に誕生した掲示板『2ちゃんねる』にさかのぼります。そこでウケるのは“本音を言っているように感じられる表現”。匿名で書き込めて、レスが伸びる(多くコメントがつく)ことで、気分が高揚する点が特徴です」(渋井さん、以下同)

 熱くなっている人を嘲笑する風潮は、2ちゃんねるができた当初からすでにあった。

「暗黙のルールの多い2ちゃんは、書き込むにはハードルが高いけれど、閲覧だけしている人も少なくない。今に通じるネットでの冷笑的な振る舞いは、2ちゃんや2ちゃん的なものによって強化されたといえるでしょう」

 2ちゃんねるの創設者がひろゆき氏であることはよく知られた事実だ。SNSの総フォロワー数が300万人を超える彼の影響力は大きい。

「沖縄への発言に限らず、ひろゆき氏のツイートをそのまま報じるメディアの問題は大きい。騒ぎに加担しているのも同然」と渋井さん。

 ただ、「ひろゆき氏が冷笑文化を浸透させたわけではなく、世の中の映し鏡です」と強調する。

「冷笑文化は自然発生的に生まれたもので、端的に言えば“祭り”です。祭りを盛り上げるために冷笑的な言動をしたり、“マジレス”をしたりする。本物の祭りだって何の神様かわからないのに参加しますよね。それと同じで、騒がれていることが事実かどうかは重要ではありません。盛り上がって楽しむネタになればいい。こうした構図は2ちゃんねるもSNSも同じで、変わっていません」