女性が冷笑を浴びやすい理由

 総務省の統計によると、ツイッター利用者の男女比はほぼ半々。多少の違いがあるとはいえ、ほかのSNSも同様の傾向だ。それにもかかわらず、女性のほうがネット上の中傷や嫌がらせの被害に遭いやすいとして国連は警鐘を鳴らす。中傷や嫌がらせには、冷笑的な言動も含まれる。

「女性たちがネット上で冷笑を浴びやすいのは“女が意見を言うな”“わきまえろ”という、社会に根強くある意識の表れではないでしょうか」

 そう話すのはフリーライターの吉田千亜さんだ。福島第一原発事故とその被害者に取材を重ねる吉田さんは、東日本大震災が発生した2011年から現在にいたるまで、被ばくの不安を訴える女性を揶揄するネットユーザーを何度となく目にしてきた。ツイッター上では「放射脳」と冷笑したり、「風評被害の責任をとれ」と迫ったりする人々がいまだに後を絶たない。

福島原発事故から10年以上がたつ今も、ネット上では冷笑という名の攻撃が相次ぐ
福島原発事故から10年以上がたつ今も、ネット上では冷笑という名の攻撃が相次ぐ
【写真】沖縄の「座り込み抗議」を笑顔で揶揄するひろゆき氏

「“女性は男性・権力に付き従うべき”という意識がまだ根強いから、SNSのような自由な空間での女性の発言にわずらわしさを感じる人がいるのでしょう。そのうえ怒りにしても嘆きにしても、感情は理屈より下に見られ、軽んじられやすい。だから女性が自分の感情を吐露すると、特に災害時のように一致団結が求められる空気の中では、邪魔もの扱いされるのだと思います」(吉田さん、以下同)

 ひと口に被災者といってもさまざまな考え、立場があり、おのおの事情が異なる。

「被ばくに対しても故郷に対しても、みな複雑で多様な思いを抱えています。避難した人もしなかった人も、葛藤の末、苦渋の選択を強いられました。ネット上でジャッジするような単純な話ではない。冷笑的な振る舞いは、そうした複雑で多様な現実を見えづらくしてしまう。問題の本質から遠ざかり、ひとりひとりが自由に語ることを妨げる口封じにもなりかねません」

 ネットが広く浸透した今こそ、冷笑の弊害について考えるべきではないだろうか。