発症頻度が全すい臓がんのうち、わずか0・4%とされる“希少がん”だ。告知はこうへいさん、みずきさんの母親の3人で受けたという。

「余命は、治療を行わなければ4か月、行えば長くて2年と医師から言われました」

複数の抗がん剤を組み合わせる治療法

 告知直後、こうへいさんは泣き、母親は目の前が真っ暗になるほどのショックを受けたという。だが、当人は意外にも落ち着いていた。

「一番怖かったのは、ネットで検索していたころ。医師から宣告を受けたときは、“やはり”という思いでした」

 そのとき、みずきさんは自分のことよりも、周囲の人々に思いを寄せていた。

「こうへい君や母に迷惑をかける、申し訳ないという気持ちでいっぱいでした」

 余命2年という宣告は32歳女性にとってあまりにも過酷。しかし、その現状を冷静に受け止め、YouTube上ではいつもの明るい笑顔で自らがんの報告を行った。みずきさんの大きな支えとなっているのは、夫のこうへいさん。動画ではこうへいさんも冷静に淡々と病状を説明している。

「YouTubeで公開後、多くの情報が寄せられました。医学的知識がほとんどなかったので、信頼できる情報を選ぶため勉強もしました」(こうへいさん、以下同)

「フォルフィー」と名づけた抗がん剤。バッグ状になっており、投与しつつ、みずきさんの自宅で過ごせるようになっている
「フォルフィー」と名づけた抗がん剤。バッグ状になっており、投与しつつ、みずきさんの自宅で過ごせるようになっている
【一覧表】あなたも知らずに食べている!?発がんリスクの高い食べ物たち

 ネットだけでなく、友人や知人の医師から直接アドバイスを受けたという。

「迷ったとき、親身に相談にのってくれた友人の医師がいたことは心強かったです」

 みずきさんの場合、がんの大きさや場所、そして転移があったことから、担当医からは、手術や放射線治療は難しいと告げられていた。

「その時点で『標準治療』では抗がん剤治療しか選択の道はありませんでした。抗がん剤治療に否定的な意見がネット上では多く見られますが、最終的には、みずきの意志を尊重しました」

 標準治療とは、科学的根拠に基づいた、公的医療保険が適用される一般的な治療のこと。基本的に全国各地の基幹病院で受けることができる。抗がん剤治療を決意したみずきさんは、昨年11月末に入院した。

 みずきさんが選択したのは、「フォルフィリノックス療法」だった。通常のすい臓がんに効果を示す、いくつかの抗がん剤などを組み合わせて投与する治療法だ。

「検査の結果でフォルフィリノックスの副作用が出にくい体質であることがわかったこと、同じ膵腺房細胞がんの治療で実績があったと担当医から聞いたことが決め手でした」(みずきさん、以下同)

 膵腺房細胞がんの治療ガイドラインはなく、通常のすい臓がんの治療法しか選択の道はなかった。

「抗がん剤治療は身体にダメージがあるので、本当のところ抵抗もあったんです。しかし、今のほうが体力があるはずなので、治療薬の中でも一番強い抗がん剤で治療していこうと決めました」