目次
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ー 本名が「信夫」だからかなった弟子入り
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ー 酒のしくじりで師匠から「破門だ!」
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ー 何と300万! 勝負師として強運を発揮
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ー 尻を叩いて支えてくれた妻との思い出
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ー “生きたお金”で手に入れた理想の寄席
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ー 長年支えられ、存在感を示す『笑点』
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ー 毎日がその日暮らしの落語家人生

 18歳で落語界入りし、『笑点』で誰もが知る落語家のひとりとなった三遊亭好楽。酒で失敗し破門を告げられたこと数知れず。他の一門への移籍や、『笑点』の降板など人生の転機も。それでも長年、第一線で活躍を続けられたのは、家族や仲間の支え、そして亡き妻も太鼓判を押す“強運”にあった。“持ってる”男の落語家人生とは……。

 爆発的な人気があるのか? と問われれば、う~んと首を傾げ腕組みをしてしまう。「ファンです、キャー」と熱狂的な握手&サイン攻めにあう場面も、う〜ん、うまく想像できない。

 だが、誰もが知っている。仕事に出かける際には「おや、好楽師匠!」とご近所さんに気軽に声をかけられ、登下校中の小学生には「あ、ピンクのおじちゃんだ、ピンクのおじちゃん!」と無邪気になつかれる。

 そんな落語家。

 例えれば、都こんぶ?か。 

 飽きられずに長く同じ風味で売れ続ける商品に似た、いわば“ロングセラー芸人”。子どもにも大人にも好まれる。おまけにかめばかむほど味わい深いうまさ。 

 一見、普通っぽい。常識人にも見える。凡庸か? そんなはずはない。普通で常識人で凡庸な存在ならば、芸人という生きざまをこれほどまで長く、第一線で保ち貫くことなんてできやしない。

 この春で芸歴57年目に突入する落語家、三遊亭好楽(76)のことを、

「おまえの父ちゃんってアホやな」

 そう見抜いた同業者がいる。笑福亭鶴瓶(71)だ。

 鶴瓶が言い放った相手は、好楽の息子で好楽とは兄弟弟子(共に五代目三遊亭円楽さんの弟子)の間柄の三遊亭王楽(45)。実の息子に向かって、「父ちゃんってアホ」って……。実はこれが、芸人にとって最高の褒め言葉であることを王楽は知っている。当時を振り返りながら、こう証言する。

「私は鶴瓶師匠にかわいがられていたんですが、鶴瓶師匠と好楽との付き合いはほとんどなかった。ある日、ほぼ初対面であれこれ話したそうですが、その直後に鶴瓶師匠にお目にかかったときに『勘違いしていた。兄さん(=好楽のこと)、もっとまじめなのかと思っていた。あの人、おかしいわ、アホや』、そう言っていましたね」

「普通」や「凡庸」ではない何かが好楽に宿っていることを、「普通」や「凡庸」からかけ離れた、というか1ミリもかすっていない芸人である鶴瓶が「アホや」と鋭く見抜いたのである。

 人のよさそうな看板の下に隠されている素顔を探る。