流山市独自の“サポート職”も

不公平感をカバーするために、国のナショナルミニマム(国家が国民に保障する最低限の生活水準)があるべき。例えば、防衛費を倍増すると掲げても、何の根拠に基づいて倍増なのか説明がなければ、そのエビデンスがわかりません。倍増というあいまいな表現にすることで本来、保育のインフラに投じることができたかもしれないお金が不明瞭なまま使用されてしまう

 政府は、少子化対策を長年講じてきたと釈明する。しかし、効果が出ていないのだから、普通の企業であれば「見直す」のが当たり前だろう。そんな中、それすらしない。流山市でいうところの経営戦略が「ない」のは明白で、悲しいかな、それが日本政府の少子化対策の現状だ。

 あと5年もすれば、日本の人口は毎年、世田谷区の人口に相当する100万人ずつ減っていくといわれている。

子育てしやすい制度とインフラを整える。この2つをしっかりやれば、少なくとも子どもが減り続けるということはなくなると思います。不安を払拭するために、政治はあるはずです」

 現在、流山市は子どもの数が大幅に増加したことで、過大規模校が生まれている。加えて、小中学校の教員確保という課題に直面している。

2023年時点では、世帯数・人口数ともに毎年増加している流山市。市役所も活気にあふれている
2023年時点では、世帯数・人口数ともに毎年増加している流山市。市役所も活気にあふれている
【写真】「マーケティング課」を創設した井崎市長と流山市役所

「市独自の『学校サポート教員』『学校サポート看護師』などを配置する対策を講じている最中です。また、文部科学省が掲げる『学校教育における外部人材活用事業』については有意義なものと考えております。今後も流山市では、安心して子育て共働き世代が暮らせる市政に挑戦していきたい」

 取材の終盤、「人口が増えれば、それに付随する新たな課題が生じる」と語る井崎市長が印象的だった。少子化対策を考えるうえで、見習うべきお手本がいる。そして、“その後”も視野に入れた戦略が必要だということを、先を行く流山市は教えてくれる。


取材・文/我妻アヅ子