コロナ禍で人々に寄り添った動画コンテンツ

 そんな『THE FIRST TAKE』の中でも注目したいのが、YOASOBI の『夜に駆ける』だ。「THE HOME TAKE」と題され、コロナ禍で配信されたコンテンツのひとつで、YOASOBIをメジャーシーンに押し上げたヒットソングでもある。

『THE FIRST TAKE』をきっかけに多くの人々の目に留まっただろう。人々が集まることを許されなかったあの頃に、少しでも“ライブ”や“生”という感覚を擬似的にも味わうことができたからかもしれない。

 YOASOBIのikuraは「THE HOME TAKE」の動画冒頭でこう話している。

「夜のみんなの1人の時間に、少しでも寄り添えたらいいなと思います」

 自粛生活を強いられ、不安ばかりが煽られた当時、エンタメが不要不急なのかと多くの議論が交わされた。リアルでのつながりが絶たれていく中、この動画に救われた人もいるだろう。

 他にも『THE FIRST TAKE』で配信されたパフォーマンス動画は、ほとんどが100万回再生を超えている。

「100万再生いけばヒットコンテンツと言えるYouTubeの中で、これだけの再生回数を世に送り出したことはすごいです。配信する楽曲の選曲などで、ユーザーの心を掴んでいるのでしょう」(前出・エンタメ誌の編集者)

 視聴ユーザーを「一発撮り」という謳い文句で騙していたという捉え方もできるが、一方でそれだけユーザーたちが望んでいるコンテンツを産み出していたということも再生回数が物語っている。

 音楽とはそもそも何か。そんな議論が繰り広げられているが、音楽の楽しみ方は人それぞれであっていいだろう。歌詞の捉え方が聞き手に委ねられるのと同じように、動画コンテンツをどのように受け取るかも視聴者に委ねられている。