島根さんが遭遇したお金のトラブル5

Case1:夫名義の銀行口座が死後「即凍結」…キャッシュカードの番号は生前、共有すべき

 60代女性のAさんの夫は、ある日突然、心筋梗塞で亡くなった。家族のメイン口座は夫名義だったので、葬儀費用などを下ろそうと銀行の窓口に行き「夫が亡くなり、妻の私が、代わりにお金を下ろしたい」と事情を説明。

 すると、口座が凍結され、お金を下ろすだけではなく、振り込みや口座引き落としなどの取引も一切できない状態になっていた……。

 ただでさえ夫が突然亡くなって茫然(ぼうぜん)自失のAさんは、「お金がないとお葬式ができない!」とパニックに。幸いにも友人たちがお金を貸してくれたため、なんとか葬儀を済ませることはできた。

 銀行は、なぜそんなにも無慈悲な対応をとったのか。

「口座が凍結されたのは、銀行の窓口で夫の死亡を伝えたから。通常、銀行が名義人の死亡を知るタイミングは、相続人である妻などが提出した死亡届が受理されたあとです。

 しかし、Aさんから報告を受けた銀行は、名義人の死亡を知ってしまったので口座を止めなければいけなかった。逆にいうと、報告する前だと口座からお金を引き出すことができたのです」

 当たり前だが、キャッシュカードの暗証番号を知らないことには、お金は下ろせない。メイン口座が夫の場合は、万が一のために暗証番号を共有しておこう。

「手元に葬式費用どころか生活資金もない……という場合は、銀行に名義人死亡の報告をする前に、当面の生活費を下ろすことが大切です。その金額のめどは、3か月分ほどの生活費でしょうか」

 また、他の遺族に黙って多くの金額を引き出してしまうと、

「遺族間で相続の話し合いをするタイミングで『なぜ亡くなった直後に大金を引き出したのか』『引き出したお金を隠しているのではないか』とトラブルになる可能性があります」

 という。

「なので、お金を引き出す際は、事前に他の相続人にきちんと報告をし、家賃、光熱費などの生活費や、葬儀のために使用したとわかるよう、メモや領収書を残しておくとよいです」