ちょっとした勘違いと確認不足が、Cさんの借金の原因となってしまった。

 夫が借金を残して死亡した場合、通常は、妻や子どもなどの相続人が法律で決められた割合で借金相続することになる。借金を避けるには、夫の死亡から3か月以内に家庭裁判所で相続放棄の手続きを行う必要がある。

 3か月以上経過してしまっている場合でも、事情によっては相続放棄が可能な場合もあるが、弁護士に相談が必要となるため、借金があることが発覚した場合は早急に対応したい。

 夫婦であっても「借金を隠してない?」というのは、なかなか聞きづらい。しかし、残される妻に負の遺産を負わせないためにも、腹を割って話すべきだ。

Case4:夫と暮らした思い出の実家が義理の弟に取られる!?

 子どものいない70代女性Dさんの夫は兄弟2人の長男で、実家は地元の資産家で不動産を多く持っていた。夫は親から複数の不動産を相続しその1か所は自宅、ほかは収益物件として賃貸に回し、家賃収入で暮らしていた。

 そんな夫が亡くなってひと騒動。夫の弟がDさんに対し、「これまで自宅にしていたマンションを含めた不動産を自分側に返してほしい」と言い出したのだ。

 弟からしてみれば、「兄の持っていた不動産は、もともとうちの家系から引き継いだものだから、嫁のDさんのほうに渡るのは納得がいかない」という気持ちが強かった。

 だが、そうなるとDさんは収入どころか住む場所までなくなってしまうと非常に困惑した。

 もめにもめた話し合いだったが、最終的には「Dさんの存命中は自宅や不動産はDさんが所有するが、Dさんの死後は夫の実家である弟の家系に返す」ということでお互い合意。Dさんは、自宅に住み続けることができた。

「夫が実家から受け継いだ資産が多く、しかも子どもがいない夫婦の場合などで起こりやすい相続トラブル。これを防ぐ最も有効な手立ては前述したように、遺言書です。

 このケースでは法定相続人は妻と弟。ただし、夫が生前に『不動産はすべてDさんに残す』という遺言書を書いておけば、財産すべてを妻に残すことができます」

 遺言書の内容にかかわらず相続人が最低限もらえる遺留分もあるが、兄弟には認められていない。遺言は夫の意思そのものだから、そこに不動産の相続方法が指定されていれば、弟も納得しやすかったかもしれない。

 また「Dさんの存命中は自宅や不動産はDさんが所有するが、それは妻一代のことでその先は本家に返す」という条件を夫婦で共有し、事前にDさんの義弟にも知らせておけば、もめることはなかっただろう。

 子どものいない夫婦の場合、法律では財産を妻のほかに兄弟姉妹や、甥や姪相続することになる。妻と夫の実家がもめないためにも、遺言書を残すのがおすすめだ。