そうした草の根的活動と、現在と同じ「フルオープンパック」というフタ付きの容器への変更をきっかけに、明治ブルガリアヨーグルトは今に続く、食卓に欠かせない存在になっていった。

ご当地ものは「夏はさっぱり、冬は濃厚」

 この間、実は約2年に1回、パッケージの柄を変更。そして50年目の今年、新製法「くちどけ芳醇発酵製法」によって、ヨーグルトのかたさを維持しながらも、よりなめらかで濃厚さを感じる味わいに変化した。地道な努力から始まったプレーンヨーグルトは、これからも進化を続けていくだろう。

 ここからは「カップヨーグルト研究会」の名でSNS上でヨーグルトのレビューを発信するヨーグルトマニアの向井智香さんに、プレーンヨーグルトの魅力を聞いていく。

日本ではさまざまなフレーバーの甘いヨーグルトが出ていますが、私が海外の方に話を聞くと、プレーンヨーグルトは『すっぱい』のが基本で、日本のような加糖ヨーグルトは子ども向けの商品だと思っている人が多いように感じます」(向井さん)

 特にヨーロッパなど、諸外国ではヨーグルトを食材として利用することが多いため、無糖のヨーグルトが一般的だとか。いわば、日本はフレーバー展開が豊富で、まさにそこが「楽しみどころ」のひとつだという。

 では、日本国内の大手メーカーが販売しているプレーンヨーグルトや、各地方で作る「ご当地ヨーグルト」には、どのような特徴があるのだろうか?

ざっくり分けるとすると、大手のヨーグルトは菌や製法等の研究開発力が魅力、ご当地ヨーグルトは地元の生乳へのこだわりが魅力と感じています」(向井さん)

 菌の違いによってヨーグルトの風味や質感も変わるため、メーカーによっては乳原料の脂質の有無に合わせて使用する菌を変え、無脂肪ヨーグルトでも引けを取らない味わいになるように工夫しているところも。

 また、大手メーカーの中でも、容器の中で発酵させるもの(明治ブルガリアヨーグルトなど)と、発酵させたものを攪拌して容器の中に詰めるもの(小岩井乳業生乳100%ヨーグルト)など、細かい製法に違いがあるのだとか。

生乳は農産物なので、季節によって味わいが変わるものですが、大手メーカーさんの多くは原料の配合により年間を通して安定した味が提供できるよう調整されています。対してご当地では成分を調整しないものが多く、『夏はさっぱり、冬は濃厚』など、同じヨーグルトでも季節でその味わいが変わるものが多いです」(向井さん)

 季節によって味が変わるというご当地ヨーグルトだが、地域によってどのような特色があるのだろうか。

例えば岩手県ではアルミパウチで発酵させる1キロサイズのヨーグルトが流行っていて、酸味を抑えてもっちりとした食感に仕上げたものが多いです。

 岡山県の蒜山ではジャージー牛が育てられており、発酵中に自然に分離して黄色いクリーム層ができあがるヨーグルトが有名です。北海道の十勝では脱脂粉乳で無脂乳固形分を高めたコクの強いヨーグルトが多く、バターの生産量の多い地域ならではの副産物の活用を感じます」(向井さん)