10歳のときの父親の死

 そんなYOSHIKIの宿命の起点というべきものが、10歳のときの父親の死だ。当時は病死だと説明されたが、中学時代に親戚の家で耳にした会話で、自殺だったことを知ったという。

 こうした少年期の経験が、精神形成に大きな影響を与えたことは間違いない。それ以前はクラシックやジャズを好んでいたが、やがて、耽美や刹那、退廃、慟哭といった要素を持つロックに惹かれ、その体現者となっていく。その成功は同時に、いわば死に近い場所で生き続けるような試練をもたらすものでもあった。

 10歳くらいまで小児ぜんそくで入退院を繰り返し、デビュー後も限界を超えたパフォーマンスで首などを痛め、頸椎の大手術を受けるなど、満身創痍で活動してきたYOSHIKI大事な人に次々と去られてしまうという宿命もまた、成功と隣り合わせだったのだろう。もっとも、同年同月、彼の9日後に生まれて26歳で亡くなった尾崎豊さんに比べると、彼には一種の打たれ強さも感じる。

 それは意外と軽くてちょっと抜けたところがあるからかもしれない。デビュー前、名前を売るため『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』(日本テレビ系)の運動会企画などに出演。今回も喪服姿の自撮りをSNSに上げたことが、なぜ?と騒がれたりした。

 そんなキャラも生かしつつ、芸能人としても人間としても長生きしてほしい。

宝泉薫(ほうせん・かおる) アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。