「反抗期」を乗り越え「頼れる人」に

自然に囲まれた徳島県の山奥の集落での生活は不便に見えるが、それすらも楽しむように廣川家は今日を生きていく
自然に囲まれた徳島県の山奥の集落での生活は不便に見えるが、それすらも楽しむように廣川家は今日を生きていく
【写真】自ら動物を狩り、捌いて食料にするスーさん。お手製の五右衛門風呂、バケツに便座を置いたトイレ他

 けれど、「違うことに慣れとった」一方で、このころの和楽は「この家から早く抜け出したい」とひとり考えていた。

 その気持ちが態度に表れていたのだろう。あゆみんは当時、心を痛めていた。

 実は昨年6月、あゆみんは和楽の変化について話してくれていた。年齢的なものなのか感情の抑制が利かなくなり、弟や妹に攻撃的に接し、あゆみんにも反抗。そのうちスーさんにまで反発するようになった。

 和楽の変化に気づいたのは5年生ごろだが、態度がもっとも激しくなったのが6年生になってから。

「私との関係がものすごく悪化したの。何を頼んでも“イヤだ!”って言う。私もこんな性格だからすごい反発して。顔を見るだけでケンカしてた」

 四六時中機嫌が悪いのではない。機嫌がいいときは、とても優しいいつもの和楽。そこであゆみんは考えた。

「これはもしかしたら、この年頃特有の、時間の流れの上での仕方のないことかもしれない。なら、私が待てばいい」

 そして、和楽を愛することに徹しようと決め、行動する。

「ある日、いつものように険悪になったんだけど、思い切って“らくさん大好きっ!”って言ったら“おれも~!”って。それで氷解した気がして。私、嫌われてなかった。年齢のせいなんだって、ほっとした」

 その後もあゆみんは口に出して「大好き」「かわいい」と言い続けた。すると─。なんと和楽は、機嫌が悪くても愛情を表現してくれるようになったのだ!

「洗濯、こんなに出してきやがって!」とあゆみんが言っても、和楽は「ごめん。ありがと。お願い。チュッチュ」と返してくる。あゆみんはすっかりうれしくなって「んもお~」。

「完全に私、操られているよね(笑)」

 和楽との関係が悪かったときは「とても苦しかった」とあゆみんは振り返る。期間は小学校を卒業するまで続き、「反抗期だと思っていても苦しかった。長かった」。だから和楽といちゃいちゃできるようになったのが「すごく大きかった」と言う。

「反抗期」を乗り越えた今、あゆみんは「らくさんの存在が大きく変わった」と話す。「面倒を見なくちゃいけない人から、頼っていい人になった。私より力持ちになって相談もできる」

 話を和楽に戻そう。この暮らしが好きになったのはいつごろ?

「中1の3月」

 ええっ、そんな最近!?

「なんかいつのまにか気持ちが変わっとったのもあるけど、『あゆみんとスー』(廣川家最初の書籍。主婦と生活社刊)を読んだのが大きい。小3ごろに1回読んでいて、そんときはなんとも思わんかった。でも、昨年読んだときは、ああスーさんこういう感じで思っとるんか、とか、自分たちのことをこういうふうに考えているんか、とかがわかった。それで大好きになった」

 ああ、そうだ、思い出した。『あゆみんとスー』を企画したとき、「自分たちがどういう考えでこの暮らしを選んだのかを、将来大人になった子どもたちに読んでもらえたらいいな」とスーさんとあゆみんが話していたのを。

 らくさんに最後の質問です。

 高校はどうする? スーさんとあゆみんは、遠くの学校で寮生活するのがいいと言ってるよ。家に縛られず、自分のことだけに時間を使ってほしいのだって。

「うん、知っとる。今、考えとるとこ」

『「どうぶつ大家族」廣川家の好日』(主婦と生活社刊)には、この家族のもっと“深い”暮らしが描かれている※書影クリックでAmazonの販売ページへ移動します
取材・文/吉川亜香子

よしかわ・あかね 書籍編集者。哲学のある人の生き方をひもとく企画に携わることが多い。10代のころから熱烈な阪神タイガースファンで、昨年は応援が忙しく、ほとんど仕事をしなかった。お宝はランディ・バースに書いてもらったサイン色紙。