問われるのは「人間としての資質」

 また、相撲界の伝統的な構造も関係しているという。

相撲界のピラミッド構造というか、幕下と十両では、明確な主従関係があります。幕下以下は“使われる者”、十両以上が一人前で“使う立場”です。最近はコンプライアンスの点から、この構造を変えなくてはいけないといわれます。でも、力士全員を平等にしてしまったら、相撲の面白さをスポイルしてしまうという問題もあるんです」

 相撲はスポーツではなく、伝統を守ってきた国技といわれる。その根底を支えてきた力士間の身分の違いを否定してしまうと、相撲の世界観が崩れてしまう。横綱だから認められる特権もあり、幕下だからこそ下積みで頑張ることで、成り上がれるのだ。西尾さんは「慎重に扱わなければいけない問題」としつつ、

「力士個人の、人間としての資質が問われることになります。相撲界のピラミッド構造を認めつつも、下の人間に対する思いやりを持ち続けること。上に立つ人間だから、何をやっても許されるといった考えを改めることです。

 協会も問題が起こるたびに研修という形で力士の教育を行っています。こうした研修会を開く頻度を上げ、下位の力士も1人の人間として尊重するコンプライアンスを、徹底して学ばせることが求められるのでは」

 10年前に比べると、格段に角界の状況はよくなっている、と西尾さん。後はその中にいる人間が、地位が上がっていく中で、自分自身を律することができるかにかかっているのだろう。