受動喫煙対策に関して、区市町村間の連携を図る東京都

仙台市内中心部にある勾当台公園。市民の憩いの場所で、野外音楽堂などもあり、週末にはさまざまなイベントが催されている(写真提供:宮城県観光戦略課)
仙台市内中心部にある勾当台公園。市民の憩いの場所で、野外音楽堂などもあり、週末にはさまざまなイベントが催されている(写真提供:宮城県観光戦略課)
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 札幌市や仙台市のような地方の大都市だけではなく、東京都も各区がさまざまな受動喫煙対策を行なっている。例えば全国に先駆けて、2002年に路上喫煙に罰則(過料2000円)を設けた条例を定めた千代田区は、積極的に喫煙所の設置を進めている。2019年に導入された「喫煙トレーラー」は、現在「ちよだプラットフォームスクエア」で稼働中だ。

「トレーラー型の喫煙所は、2年に1度、周辺地区で開催される『神田祭』で神酒所を設置するため、公衆喫煙所を移動する必要があり採用しました。トレーラー型は必要に応じて移動できるのがメリットだと考えています」(担当者)

ちよだプラットフォームスクウェア敷地内に設置された喫煙トレーラー(千代田区ホームページより)
ちよだプラットフォームスクウェア敷地内に設置された喫煙トレーラー(千代田区ホームページより)

 また、台東区でも1997年に「東京都台東区ポイ捨て行為等の防止に関する条例」を制定。ポイ捨て及び歩きたばこを禁止するとともに、通勤時間帯である午前7時から9時までの2時間を喫煙禁止時間とし、路上や公園などの公共の場所における喫煙を禁止している。そんな同区も公衆喫煙所の整備を推進している。

「区による整備も行っていますが、用地の確保に課題もあり、区の整備に加えて、民間事業者が公衆喫煙所を設置する際の設置経費、維持管理経費を助成するなど、民間企業の協力も得ながら喫煙所の整備を行ない、分煙が図れる環境づくりに取り組んでいます」(台東区 環境清掃部 環境課担当者)

 品川区も2003年に「品川区歩行喫煙および吸い殻・空き缶等の投げ捨ての防止に関する条例」を施行。区内全域における歩行喫煙、ポイ捨て防止の啓発活動を進めると同時に、区民の良好な生活環境を実現するため、一般開放可能な屋内喫煙所(コンテナ型、トレーラー型など、屋内と同等の設備を有する屋外設置の喫煙所を含む)を設置する建築物の所有者に、喫煙所の設置および維持管理費を助成している。

 なお、東京都は区市町村部などの自治体によって喫煙に関する条例が異なり、住民はもちろん、旅行者やビジネスでの訪問者の中には異なるルールに戸惑う人も少なくない。その点を東京都の保健政策部に尋ねたところ、「受動喫煙対策に関して、各自治体の担当者との意見交換を定期的に実施しており、工夫した取り組みを行っている内容を共有し、それをもとに各自治体で検討していただきます」(担当者)との回答が得られた。また東京都では、区市町村が整備する公衆喫煙所の費用の1/2を負担する(上限あり)という支援を行なっていることもあり、都内の喫煙所は増設傾向にあるといえそうだ。

 この10年間で現在習慣的に喫煙している人の割合は減少しているが、国内で販売された紙巻たばこの2023年の総本数は878億本。また、新しいたばこのスタイルとして販売が開始された加熱式たばこの同年の総販売本数は585億本と市場の広がりを見せている。この先、望まない受動喫煙や、吸い殻のポイ捨てを防止するために一定の効果があるとされる分煙施設の整備に取り組む自治体が増えていけば、たばこを吸う人と吸わない人が共存できる社会もそう遠くない未来に実現できるだろう。