「トム・クルーズが演じた役と聞いて、ちょっとまいったな、主役じゃないか、これはやるしかないなと。その場で"よろしくお願いします"って、決めました」
6月19日から東京・天王洲 銀河劇場にてスタートする舞台『ア・フュー・グッドメン』で、初舞台にして主演を務める淵上泰史。昨年のドラマ『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』で、吉瀬美智子演じる専業主婦の不倫相手役として彼を知る人も多いはず。27歳で俳優デビューし、5年目。"遅咲きの駆け出し"と語る彼に、なぜオファーがきたかを聞くと、
「僕も気になってお聞きしたら"淵上くん、声がいいんだよ"って言っていただけたんです。僕自身、決して好きではない声を、初めて褒めていただけたことがすごくうれしかった」
キューバの米海軍基地で起こった殺人事件の真相を探っていく、軍事法廷サスペンス。ʼ92年にトム・クルーズ、ジャック・ニコルソン、デミ・ムーアによって映画化され、数々の映画賞にノミネートされた人気作を、舞台に。
「稽古のたびに、緊張します。慣れないですね。今回、初舞台なので"声が届かない"って言われるかもしれない。でも、気持ちさえ伝われば、なんとかなるんじゃないかって。こっちは、地べた這いずりまわってきた自負もある。そんな気合も垣間見せられたらと思っています」
15歳から親元を離れ、大阪にサッカー留学。ガンバ大阪のユースに入り、プロを夢見て大学卒業まで続けるも叶わなかった。そして、もともと映画好きだったことから俳優の道へ。アルバイトをしながら、小劇場で黒子やチケットのもぎりを続け、いろいろな芸能事務所を受けても門前払い。ようやく決まった事務所でも、この1年ほど前まで、マネジャーとともに1日4~5件のテレビ局や映画制作会社を挨拶まわりをしていたという。
「サッカーでメンタルを培われた気がします。相当のことじゃないと崩れない。デビュー前の役者を目指していた6~7年も、悔しいことが多かった。そういうことをいま、力に変えています。虎視眈々と、時代は変わるぞって思いながら(笑い)。劇場にいらしたみなさんが、僕のファンになるような興奮するいい芝居がしたい。そのために、コツコツ、謙虚に芝居と向き合っていきます」
撮影/佐々木みどり