大きく変わった奨学金制度
2004年、日本育英会の廃止によって奨学金制度は大きく変わった。具体的には、有利子化、旧世代にはおなじみの「大学教員等になると返済が免除される」制度の廃止、貸与奨学金の取り立ての強化などが挙げられる。日本育英会から組織改編して生まれた日本学生支援機構では、無利子と有利子の貸与型奨学金があり、圧倒的に有利子の奨学金を借りる学生の比率が高い。理由は、無利子の奨学金は学力的なハードルがあるからだ。それなら、大学に行くのを諦めればいいというシビアな意見もあるだろう。
「企業は大卒以上の社員を中心に採用し続けてきたことで、“学歴インフレ”が起こっています。就職するためには、無理をして奨学金という名のローンを借りてでも大学に進学しなければならない現状があります。学歴で生涯賃金の差もつく。奨学金の返済が新たな格差を生んでいるのです」
その格差を解決し、若者に元気になってもらうために大野さんが設立したのが、奨学金を借りている学生と企業をつなぐ就活エージェント、奨学金バンクだ。奨学金を返済している学生を企業に紹介し、採用されれば、紹介手数料の一部を奨学金返済の原資として、奨学金バンクが代理返済する仕組みになっている。
「奨学金制度自体が悪いとは思っていません。奨学金を借りるのが当たり前の時代であるなら、無理なく当たり前に返せる仕組みが必要です。奨学金の返済は、今や大きな社会問題。民間企業も当事者意識を持ってほしいです」