目次
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ー ベルリン出身のユダヤ人演じる中島裕翔
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ー やりきった自分がどう変わっているのか
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ー 迎える32歳!課題は丁寧さ

「セリフ量が膨大で、台本を読むのがとにかく大変で」

 と話すのは、舞台『みんな鳥になって』(6月28日〜)に出演する中島裕翔。レバノン出身の劇作家ワジディ・ムワワドが今、世界が抱える問題に切り込んだ意欲作で、演出は現代演劇界をリードする上村聡史が手がける。

ベルリン出身のユダヤ人演じる中島裕翔

 ニューヨークの図書館。ベルリン出身のユダヤ人・エイタン(中島)は、イスラム史を学ぶアラブ人・ワヒダ(岡本玲)に一目惚れ。恋に落ちたふたりを、エイタンの父(岡本健一)は頑なに認めない。父の出生に疑問を抱いたエイタンは、ワヒダとともに祖母の住むイスラエルに向かうも爆弾テロに巻き込まれる……。

「生い立ちや置かれた環境、さらには戦争。身近な人々があっけなく命を落としていくという過酷な状況下で営まれる日常生活は、私たちの普段の暮らしとはまったく異なります。その背景や歴史を深く理解することは不可欠であり、まずそこに大きなハードルがあると感じます」

 戦争が続くパレスチナとイスラエル。物理的距離に加え、信仰や同胞意識が薄い日本人には、抱える問題を理解しづらい。

「いかに今まで自分がそういうことに無関心でいられる環境で生きてきたか。それは幸せなことだと思います。でも、現に世の中にはこういう人たちがいる。自分を卑下する必要はないけど、今まで経験してきたもの全部が希薄に感じてしまうような壮絶さ。その中でも登場人物は必死に生きている。愛情ゆえに犯してしまった過ちなど、人間らしい部分も出せたほうがいいのかなと、今の時点では考えています」