目次
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ー 早期発見だからといって医療費が安いわけではない ー 自分の高額療養費制度の限度額を知る
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ー 自分の社会保険はがん保険並みに強い

 

「乳がんは、がんの性質や進行度に合わせて治療が行われるので、早期発見だと早く治療が終わりお金もさほどかからずに済む、とも言い切れないのが現状です」

早期発見だからといって医療費が安いわけではない

 そう話すのは、看護師でありファイナンシャルプランナーでもある黒田ちはるさん。

「乳がんは性質によっていくつかのタイプに分類されます。化学療法を3か月行ったらその後は経過観察、ということもあれば、早期発見の乳がんでも、術前に化学療法をしてから手術を行い、その後はホルモン療法に移行するなど1年以上治療が続く場合もあります。つまり、それだけお金もかかるということです」(黒田さん、以下同)

 とはいうものの、検査をきちんと行い早期発見するに越したことはない。

「乳がんに限らず、がんは早く見つかったほうが治療の選択肢が広がりますし、一概にはいえませんが、治療期間が短くて済む傾向があります」

自分の高額療養費制度の限度額を知る

主にかかってくるお金のリスト
主にかかってくるお金のリスト

「乳がんの治療には高額な医療費がかかる」というイメージを持つ人は少なくない。

「実際、『医療費を払い続けられるだろうか』と不安になる患者さんもいらっしゃいます。そうした患者さんには、日本には医療費が高額にならないような仕組みがあることをお伝えしています」

 その仕組みが健康保険制度(公的医療保険)だ。

「この制度によって、患者さんの医療費負担は1~3割で、69歳以下の就労世代の方は3割負担です。例えば、乳がんの治療で総額100万円の医療費がかかったとしても、窓口で支払うのは30万円となります」(黒田さん)

 では、手術や放射線治療、化学療法といった高額な印象がある治療を受けた場合はどうなるのだろうか。

「がんの標準治療とは、現在の治療において科学的根拠に基づき、最も効果が期待でき、安全性が確認されている治療のことです。標準治療のほとんどが健康保険の適用となります。手術や化学療法といった治療も標準治療であれば健康保険が適用されますから、突然、大きなお金がかかる可能性は極めて低いです」

 健康保険の適用で100万円の医療費の支払いが30万円になった場合、さらに負担を減らす仕組みがある。それが「高額療養費制度」だ。

「健康保険には『高額療養費制度』があり、自己負担額には上限が設けられています。所得によって設定された1か月あたりの自己負担額の上限を超えた場合は、払いすぎた金額が後日、戻ってきます」

 高額療養費制度の自己負担額は収入によって変わる。

「年収が約370万円から770万円の方の自己負担額は8万円台ですが、年収が約770万円以上になると自己負担額は16万円台になります。つまり、同じ治療を受けても自己負担額が倍近くになることもあるのです。まずはご自身の自己負担限度額を知っておきましょう」

 また、加入している健康保険の種類によっては上乗せ給付が出るケースもある。

「健康保険組合や共済などは、『付加給付』『一部負担金払戻金』といった名称で、後日、お金が支給されるものも。自動で手続きしてもらえることが多いものの、ご自身での手続きが必要な場合も。ご自分が加入している健康保険組合の要項を確認しておくことをおすすめします」