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ー 難役に挑むも「苦労はない」
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ー 『能面検事』の見どころ

 

 原作者をして“無表情な主人公ゆえに映像化不可能”と言わしめた小説を映像化したドラマ『能面検事』が話題だ。主人公の不破俊太郎は、大阪地検きってのエース。ただただ冷静沈着、誰に対しても忖度せずに職務を全うするその姿から、人々は彼を“能面検事”と呼ぶ。

難役に挑むも「苦労はない」

 その難役を担うのは、俳優・上川隆也。“能面”という役どころを演じる上での苦労について尋ねると、

「こんなふうに申し上げると誤解を招いてしまうかもしれませんが、苦労は本当にないんです。

 今回、不破という男に能面というキャラクターとしての属性を与えられているわけですが、それをどう表現するかは“多弁な”“明るい”などというような属性のひとつにすぎないと受け止めています。ですので、表情に乏しいという言い方になるとネガティブに捉えられるかもしれませんが、表情に感情を持ち込まないと考えれば、なるほどそうした男なのかと納得がいくと思うんです。

 だから不破という男が何の感情もない男なのか、というとそんなことないわけで。“能面”は苦労する部分ではなく、演じる上の取り組みがいでしかありません。どんなふうに役柄の一部として表現していくのか、日々とても楽しい作業です」

 原作は“どんでん返しの帝王”との呼び声も高い中山七里氏の同名小説。作品の中で描かれる不破という男に、上川はどんな魅力を感じているのだろうか。

「中山先生がこの物語を書こうと思った経緯やきっかけは伺っていないので、僕は知る由もないのですが、ひとつ感じるのは、いてほしいんです、こんな男に。きっと。

 こんな検事がいてくれたら、という思いが間違いなく込められているように思えて、比較するのもどうかと思いながらも、それはスーパーマンやウルトラマンなどの存在への憧憬と変わらないもののような気がするんです。

 だとすれば、僕らが幼いころから慣れ親しんできたものの一種の延長線上にある存在と捉えることもできるでしょうし、僕も元男の子として沸き立つものがあるわけで。不破のことを鼻につく存在として見ている者がいる一方、憧れている人もいると思うんです。ヒーローとしての描きようもきっとあると思うと、これは一挙手一投足がやおら楽しくなってくるというか、そんな思いで僕は取り組んでいます」