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ー バックスタンドのサポーターが急病

 

 8月9日に神奈川県横浜市にあるニッパツ三ツ沢球技場で行われたJリーグの横浜FC対浦和レッズ戦で、サポーターの体調が急変するアクシデントが起こった。当日の模様をスポーツ紙記者が語る。

バックスタンドのサポーターが急病

「後半のことでした。浦和側の観客の中に突然体調を崩したサポーターが出て、観客が席から審判に大声で状況を伝えようとします。審判はなかなか気づかなかったのですが、選手たちのほうが観客席の異様な雰囲気に気づき、審判に伝えて即座に試合が中断されました。

 待機していたメディカルスタッフとドクターらが走って客席に向かい、スタンドの壁を乗り越えて客席に入ってすぐに対応にあたり、事なきを得たようです。試合後には場内アナウンスでサポーターの意識回復が伝えられました。このとき、Jリーグの規定によって配置が義務付けられているAEDを持って駆けつけたのが横浜FCでコーチを務める元日本代表の中村俊輔さんだったため、注目が集まっています

 ネット上では中村をはじめスタッフたちの迅速かつ的確な対応に称賛の声が並ぶ。

《命を救うことに敵も味方もないですね。こういう時は選手も観客も仲間だと思います。迅速な対応だったようです。命が救われて何よりです》
《AED持っていったのは中村俊輔だったらしく、松田直樹を思い出して少し泣いた》

 松田直樹さんは2011年に練習中に急死した元Jリーガーだ。松田さんの姉もXで《松田直樹の尊敬する盟友、中村俊輔コーチがベンチのAEDを走って持っていったとの事。泣けてきた。救われる命が救われる。すごく嬉しい。無駄じゃなかったというか》とコメントを寄せている。

 松田さんと中村コーチは深い繋がりがあると語るのは前出のスポーツ紙記者だ。

「松田さんと中村さんは横浜F・マリノスのチームメイトで、ともに日本代表メンバーにも選ばれています。中村さんは2023年に行われた自身の引退セレモニーでも松田さんへの思いを《マツさんはぼくが若い頃入ったときからずっと面倒をみていただいて》と語ってます。サッカーばかりしている中村さんを食事に連れて行ったり、人を紹介するなどとして《僕を成長させようとしてくれた方》と感謝の思いを述べていました」

 松田さんの命はAEDがあれば救われた可能性がある。そのため、中村はAEDの普及活動と啓発活動に力を入れていると前出のスポーツ紙記者が続ける。

「2023年には『横浜FCの選手たちと学ぶ「はじめてのAED」』と題したネット記事が医療情報を発信するメディアに掲載され、AEDの重要性と実際の使い方を学ぶ講習会に現役時代の中村さんも参加していました。さらに中村さんと松田さんの元所属先の横浜F・マリノスも松田さんが亡くなって10年目になる2021年に、松田さんの背番号の3のユニフォームTシャツを販売し、売上金をAEDの普及啓発事業などにあてています」

 決して無駄ではなかった14年前の松田さんの死。“泣けてくる”のは松田さんの姉だけではないだろう。