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ー 3600万回以上表示された“おすすめ料理”

 12月6日、農林水産省が公式Xを更新し、20歳以上の成人に向けて1日当たりの野菜摂取目標を発信した。投稿では摂取目標量は《350g》と明記し、あわせておすすめのレシピを紹介。しかし、この内容が想定外の反響を呼び、SNS上では不満の声が相次いでいる。

3600万回以上表示された“おすすめ料理”

「投稿には彩り豊かなテリーヌの写真が2枚添付され、タップすると調理手順や材料が確認できる仕様になっていました。農林水産省としては“野菜をおいしく、楽しく食べてもらう”意図での発信だったと思われますが、利用者の生活環境との温度差が浮き彫りになったようです」(経済ジャーナリスト)

 X上では、《では毎日これだけの野菜食べられる給料ください》《野菜の消費を拡大するために、野菜の消費税ゼロにしてください!!!!食べたいんですよ!》と、リアルな声が並んだ。

「背景には、以前から続く野菜価格の高騰があります。農林水産省が12月5日に更新した情報によれば、4日時点の小売価格はレタスが194円、トマト(大玉)が681円、ブロッコリーは428円。日々の買い物で実感する価格の高さは消費行動にも影響します。必要量をそろえようとすると一定の負担が避けられず、野菜摂取の推奨が“理想と現実の距離”を感じさせる結果となりました」

 さらに、紹介されたテリーヌについても《テリーヌなんて絶対作らない 広報ヘタクソか》と批判が集まった。テリーヌは層をつくる工程が特徴で、見栄えがする反面、下準備や加熱の手順が多く、家庭の食卓に定着しやすいメニューとは言い難い。調理に割ける時間が限られる世帯にとってはハードルが高い。

野菜摂取を呼び掛けた農水省の投稿(農水省の公式Xより)
野菜摂取を呼び掛けた農水省の投稿(農水省の公式Xより)

 また、添付されているテリーヌの画像にはオクラが使われていたため、《いまは冬ですが、オクラはどこ産のを使えばいいですか?》といった細かい指摘も。

 今回の反応について、前出の経済ジャーナリストは次のように言う。

「物価上昇の影響だけでなく、生活スタイルの多様化も進む今、行政には“受け手がどう実行できるか”を踏まえての情報発信がより重要になっています。野菜摂取目標の周知自体は意義がありますが、日常の調理環境や負担感を想定したうえで、取り入れやすい選択肢を提示すべきでしょう」

 農林水産省の今回の発信は、行政と生活者の間にある認識のギャップを見直す機会となったようだ。