刀ミュが愛される理由

 刀ミュといえば、これまでも「阿津賀志山異聞」での源義経・弁慶、「三百年の子守唄」での徳川家康の一生など、歴史の重要局面に深く切り込んできた。

「刀剣乱舞というコンテンツが10年以上愛され続けている最大の理由は、歴史を単なる『キャラクターの背景素材』として消費せず、歴史そのものに真摯に向き合っている点にあるのではないでしょうか。特に『観応の擾乱』は、昨今の歴史ブームでも『複雑すぎて手が出しにくい』と言われる領域です。

 しかし、刀ミュはそこから逃げずに、兄弟の愛憎や正義の衝突として描き出しました。ファンも『推しを理解するために歴史を学ぶ』という動機は非常に強力で、グッズはもちろん専門書も購入するファンも多いでしょう。今回の新作も、足利氏ゆかりの寺社仏閣への観光誘致に波及効果をもたらすかもしれません」

 刀ミュの集大成に向けた重要な一章となる『静かなる夜半の寝ざめ』は、観応の擾乱という難解な歴史事件にどう切り込むのか。藤田玲が演じる足利尊氏と、6振りの刀剣男士たちが紡ぐ物語から、目が離せない。