『おコメの女』ではなく『ザッコクの女』?

 『おコメの女』1話を観たところ、個人的には若干企画が粗いような気もした。

 どうやら東京国税局資料調査課という、隠語で「コメ」と呼ばれる部署は実在するようだが、松嶋演じる米田正子が米が大好きで、職場に炊飯釜を持ち込んでいきなりご飯を炊きだしたり、怪しい人物に対して「ヌカの匂いがする」と言ったり、「おコメ」に無理やり寄せている気がしないでもない。

 何より正子は、資料調査課から新しい部署「課税第二部複雑国税事案処理室(通称ザッコク)」を創設するのだが、その部署については「マルサもコメも介入しない事案を調べ上げるのがザッコク」だというセリフがあった。

 だったらタイトルは『おコメの女』ではなく『ザッコクの女』なのでは? と思ってしまったのだが、どうだろう?

 ここ2年ほど、米の価格が高騰して、国民の注目が「米」に集まっているのにあやかろうとしたのかな、などと要らぬ深読みもしてしまう。

 だが、高橋克実や大地真央ら芸達者な俳優が脇を固めるアンサンブルは魅力的だ。正直、脱税の内容やトリックにはそれほど新味を感じなかったが、悪を暴いていく過程の見せ方は、さすが木9の手慣れた演出で、テンポがよく面白かった。松嶋自身もポケットに両手を突っ込んで歩いたり、頭をかきむしって日本酒に歓喜する姿が新鮮で、2話以降を見てみたいと思わせられた人も多かっただろう。

 振り返ると『家政婦のミタ』の時は、“笑わない女”で新境地を開き、社会現象にまでなった。2011年頃、既にドラマの視聴率が下がり始めていた中で40%という驚異的な数字を叩き出した時は、「テレビもまだまだやれるんだね」と編集者と言い合ったものだ。

 ぜひ『おコメの女』には松嶋の新たな代表作になってほしいし、その鍵を握るのは脚本だと思うので、さらなる面白い脚本を期待したい。

古沢保。フリーライター、コラムニスト。'71年東京生まれ。「3年B組金八先生卒業アルバム」「オフィシャルガイドブック相棒」「ヤンキー母校に帰るノベライズ」「IQサプリシリーズ」など、テレビ関連書籍を多数手がけ、雑誌などにテレビコラムを執筆。テレビ番組制作にも携わる。好きな番組は地味にヒットする堅実派。街歩き関連の執筆も多く、著書に「風景印ミュージアム」など。歴史散歩の会も主宰している。