「カメレオン俳優」と呼ばれてきた真骨頂

 久しぶりの連ドラ主演となった『テミスの不確かな法廷』では、同じ裁判官(判事補)でありながら、ADHD(注意欠如多動症)で挙動に特徴があり、『虎に翼』とは全く違うタイプを演じてみせたことは記憶に新しい。ADHD特有の目や表情の動かし方を完全に演じきってみせ、若い頃から役になり切る「カメレオン俳優」と呼ばれてきた真骨頂を発揮した。

 そうした主演の演技ができるからこそ、脇に回っても視聴者の印象に残る演技ができるのであり、かといって悪目立ちするのではなく、主演との相乗効果でドラマを面白く出来る俳優に変化を遂げたのではないか。

 『リブート』も本来なら、松山クラスの俳優なら、顔を変える前の役でなく、顔を変えてからの鈴木亮平が演じた役への配役も可能性はあったはずだ。だが本作では、あくまで顔を変える前の、少し気弱なパティシエ役を全うし、松山が演じたからこそ、筋トレなどで変貌していく過程にもリアリティが出せたといえよう。

 そして4月から始まった『時すでにおスシ!?』も、職人気質でコワモテだけど、実は心優しい鮨アカデミーの講師という、松山ならではの役を演じている。

 第1話で画面に映った自分の顔に驚くシーンには爆笑した視聴者も多かっただろう。真っ直ぐに突き進む女性と絡むと面白さが増す松山だけに、永作博美とのコラボレーションも相性が抜群で、楽しみな滑り出し。この先の展開に期待がかかるとともに、40代になって面白みの増した松山の今後も楽しみだ。

古沢保。フリーライター、コラムニスト。'71年東京生まれ。「3年B組金八先生卒業アルバム」「オフィシャルガイドブック相棒」「ヤンキー母校に帰るノベライズ」「IQサプリシリーズ」など、テレビ関連書籍を多数手がけ、雑誌などにテレビコラムを執筆。テレビ番組制作にも携わる。好きな番組は地味にヒットする堅実派。街歩き関連の執筆も多く、著書に「風景印ミュージアム」など。歴史散歩の会も主宰している。