「主人公の大西浩平は100%私です」
極限状態の人間模様をその目に焼き付け、赤松さんは除染作業員宿舎に荷物を置いたまま、夜行バスで逃亡する。所持金は5000円だった。後にネットカフェを転々とするホームレスへと転落。そしてキャバクラの店員を経験。
「最初に“お客様にお店をご案内するお仕事です”とあり、いろいろ書いてあるんだけど、最後に“捕まっても自己責任でお願いします”と。3軒目は上野の仲町通り。キャバクラと聞いて行ったら、女の子がおっぱい出して客が揉んでた。おっパブですわ。結局、そこに就職しました」
路上生活から62歳で作家デビュー。2017年11月25日、第1回大藪春彦新人賞受賞者発表。赤松利市の『藻屑蟹』は、選考会満場一致で受賞が決定した。
自らの過酷な体験と、そこで出会った癖のある人間たちを一切の飾りのない泥臭い文章で描き出した作品群は、文壇に大きな衝撃を与えた。自伝的小説『ボダ子』について尋ねられた際、赤松さんは煙草をくゆらせながらニヤリと笑ってこう語る。
「自分都合のド腐れ畜生な生きざま、主人公の大西浩平は100%私です」
4作目の長編小説では、彼の実体験をもとに描かれている。
取材時、お酒(特にレモンサワー)を嬉しそうに飲みながら、担当編集者との壮絶な原稿のやり取りや、破天荒な日常を楽しそうに明かしてくれた赤松さん。その眼光はどこまでも鋭く、しかし温かい愛嬌に満ちていた。
生きづらさを抱える現代人や、格差社会の煽りを受ける人々へ向けて、赤松さんは自身の死生観を混じえてこう強い言葉を残している。
「私は“下級国民”。死ぬまで差別と貧困を書き続けます」
62歳で彗星のごとく現れ、70歳で駆け抜けるように去っていった赤松利市さん。
波乱に満ちた人生のすべてを文学の糧に変え、どん底から放たれた言葉の数々は、今も多くの読者の胸を打ち続けている。悲惨な現実すらも圧倒的な熱量と笑いに昇華させたその生き様は、まさに人間ドラマの最高峰だった。


















