「ふさわしい」栄えある1位に輝いたのは

 いよいよ第1位。28票を獲得して見事トップに輝いたのはシーズン第1作の『男はつらいよ』('69年)だ。

「何といっても、舞台でも活躍していた光本幸子さんの愛嬌ある淑やかな演技と、寅さんの掛け合いです」(京都府・男性・74歳)

 記念すべき第1作は、寅さんが20年ぶりに柴又に帰ってくる。歓迎ムードもつかの間、さくらの縁談をぶち壊してまたもや旅に出る。

 奈良で御前様(笠智衆さん)とその娘・冬子(光本さん)と再会。幼なじみで気さくな冬子に恋した寅さんは帰京して冬子のもとへ日参する。冬子を演じる光本さんは、新派出身で初代水谷八重子さんの弟子。山田洋次監督は彼女について、

「劇団新派で鍛えられた演技の確かさと背筋の通った凛とした美しさは、48作続くことになったシリーズの初代マドンナにふさわしいものでした」

 '68~'69年にテレビドラマとして放送された『男はつらいよ』。ヒットしたが、当時ドラマは「電気紙芝居」と揶揄される時代だった。

「映画化には松竹社内でも反対の声が強かったようです。そこで山田監督が当時の城戸四郎社長に直訴して、映画化にこぎつけました。寅さんと冬子。さくらと博(前田吟)。ふたつのラブストーリーを見事に描いた。シリーズ第1作にふさわしい、よくできた作品ではないでしょうか」(ウチダさん)

 今回のアンケートでは惜しくもランキング入りを逃したが、ウチダさんが選ぶナンバー1。それは第15作『男はつらいよ 寅次郎相合い傘』('75年)である。

 結婚に失敗したリリーは、再び歌手として旅暮らし。函館の屋台で寅さんと偶然再会して、さえない中年男性・兵藤(船越英二さん)と共に3人そろって旅に出る。

「パパさんこと兵藤が持ってきたメロンをめぐって起きる“メロン事件”。寅さんが雨の降る柴又駅にリリーを迎えに行く相合い傘シーンなど、シリーズ屈指の名場面ぞろいで見どころ満載。ぜひ見てもらいたい作品です」(ウチダさん)

 渥美清さんの没後30年をきっかけに、寅さんシリーズを見直してみてはいかが。


取材・文/島 右近