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ー 今年も5回以上完投しているのは阪神の高橋遥人だけ

 先発投手の役割が変わり、完投が珍しくなった現在のプロ野球。投手の負担を考えた継投が定着する一方で、長いイニングを投げる先発の価値も改めて問われている。伝統ある賞をめぐり、球界からさまざまな意見が出ている。

今年も5回以上完投しているのは阪神の高橋遥人だけ

「沢村さんは巨人軍の宝であり偉大な先輩である。完投するものがいなくなれば賞の存続も問わなくてはいけなくなる」

 8月6日、元巨人監督の堀内恒夫氏が自身のブログを更新。自身が選考委員を務める「沢村栄治賞(沢村賞)」の存続に危機感を募らせた。

 沢村賞は1947年に創設され、1956年に始まった米メジャーのサイ・ヤング賞より歴史が古い。サイ・ヤング賞が中継ぎや抑えを含めた投手全体を対象とするのに対し、沢村賞は先発投手のみを対象とし、現在は登板25試合、完投8試合、15勝、勝率6割、180投球回、150奪三振、防御率2.50以下が評価基準となっている。

すべてを満たす必要はないものの、2023年の山本由伸は完投わずか2試合。2024年は該当者なしで、2025年の伊藤大海も7項目のうち3項目しかクリアできていません。昭和や平成には江川卓やダルビッシュ有、金子千尋のように、全項目クリアしても受賞できなかった例もありましたが、現在は候補に挙げられる投手が1人いるかどうかという状況で、今年も5回以上完投しているのは阪神の高橋遥人だけです。2005年頃から投手の分業制が進み、先発投手は『100球がめど』で交代するのが常識化。首脳陣があらかじめ球数やイニングを決めて降板させるケースが大半を占めるため、完投へのこだわりを持つ機会さえ失われているのが現状です」(スポーツ紙デスク)

 ネット上では「沢村賞は先発完投型の投手に贈る賞なのだから基準を変えなくていい」「何年かに一度、突出した投手が出たときに受賞するほうが価値がある」「メジャーは中4日で投げるため球数を抑える考え方にも理由があるが、日本は中6日が基本だから、先発投手は完投を目指すべき」「最優秀投手賞みたいに全投手を対象とした新たな賞を作ればいいのでは」など、様々な意見が聞かれる。

髭を伸ばしている落合博満氏。現役や監督時代のイメージとギャップがある(落合博満野球記念館公式Xより)
髭を伸ばしている落合博満氏。現役や監督時代のイメージとギャップがある(落合博満野球記念館公式Xより)

ソフトバンクのエースだった斉藤和巳氏は、現役時代には『100球は通過点』という意識だったと言い、投手コーチを務めた際にも、『100球って何?って思うけどね』と発言するなど、球数制限への違和感を口にしていました。また、落合博満氏も4月19日放送の『サンデーモーニング』(TBS系)で、中日の投手起用について言及。『日本の場合は中6日ですよ。120~130(球)投げて中6日空けるんだったら先発の疲労感は残らないと思うの』と語り、『球数じゃなくて、あくまでも先発は完投を目指して、できなかったらつないでいく。それに戻さなければ浮上のきっかけはないと思う』との持論を展開しています」(スポーツ紙記者)

 もっとも、「100球をめど」とする考え方を否定する意見ばかりではない。その理由を論理的に説明していたのが、メジャーで活躍する菊池雄星だった。

2019年、菊池はスポーツメディアに対して『100球と120球では試合後の疲労感が大きく違う』と語り、120球を超えたあたりから体力じゃない部分を使っている『ヤバイ状態』になると自身の感覚を明かしています。また、投球に必要な“速く、力強い"動作を鍛える筋力トレーニングでも、100回を超えると筋繊維の破壊や疲労などの要因で極端にスピードが落ちることがわかっており、本番の試合ではもっと負担が大きくなると解説。一方で、技術を磨くためには、球数を投げる期間も必要だとして、23~26歳がその時期だとも話しています」(スポーツライター)

 今後、沢村賞にふさわしい先発完投型の投手が現れるのか。堀内氏の問題提起は、「100球をめど」の是非についての議論を加速させていきそうだ。