連ドラのセオリー

 連ドラのセオリーでいうと、最終回直前で起こる危機は、“最大の山場を作る道具”であることが多く、それを乗り越えて大団円で終わる、というのがパターンだ。その通りなら蒼井と松山は元サヤに収まるだろう。

 一方で出演者の番手を見ると、2番手は中島で、松山はトリになっている。これもセオリーでいうと、主人公は2番手と結ばれて、トリは見守るというのがパターンだ。すると蒼井は中島を選ぶのか?

 ただし、安易な予測を許さない本作だし、蒼井がどちらを選ぶかというような単純な二択が、このドラマの主題ではない気もする。

 脚本家の生方美久は公式コメントで「共感や感動を目指した物語ではない」と語っていた。確かに2~3年に一度失踪したり、4回も離婚したりする人物にはなかなか共感はできないだろう。だが一方で、失踪や離婚で、何もかも投げ出してしまいたくなる気持ちは実行しないだけで誰にも覚えがあるのではないか。

 そして、「失踪癖や離婚歴」ほどの衝撃ではないにしろ、日常が軽くひっくり返るような経験も誰にでもあるだろう。「長年独身だと思って付き合ってきた知人が既婚者だった」とか、「質素に見えていた友人が実は株をやっていた」とか(どちらも筆者の実体験です)。だから案外、視聴者の共感は多いドラマだったのではないか。
 
「他人のことはわからないし、自分も他人からしたらよくわからない人間かもしれない」。

 筆者はそんなことを思ったし、このドラマを見た後だと、身近な日常もちょっと違ったものに見えてきそうだ。

 生方がこれまでフジテレビで書いてきた『silent』や『海のはじまり』などは、主人公たちの被害者意識が強すぎて個人的に得意ではなかったが、今回は一段大人の物語に昇華したのは、TBSのプロデュース力もあったのかなと想像する。

 最終回も、ドラマのセオリーなどぶち壊して、視聴者の予測を大胆に裏切る展開が待っているのか? ぜひ最終回は、オンタイムで見届けたい。

古沢保。フリーライター、コラムニスト。'71年東京生まれ。「3年B組金八先生卒業アルバム」「オフィシャルガイドブック相棒」「ヤンキー母校に帰るノベライズ」「IQサプリシリーズ」など、テレビ関連書籍を多数手がけ、雑誌などにテレビコラムを執筆。テレビ番組制作にも携わる。好きな番組は地味にヒットする堅実派。街歩き関連の執筆も多く、著書に「風景印ミュージアム」など。歴史散歩の会も主宰している。