天職との出会い

 くしくも取材の前日は橋田さんの無二の親友かつ戦友でもあった、同番組のプロデューサー・石井ふく子氏の「百寿を祝う会」に出席したという。

「石井先生は、いらした方々全員とご挨拶をされていましたね。以前と比べても、エネルギーがまったく衰えてないんです」

 橋田・石井作品では、子役でも大人と同等にプロの役者として扱われた。

「子どもだからうまくできないこともあったのですが、スタッフさんや共演者の方々にきちんとたしなめられたり。また、演技に関しては、一人の役者として褒めていただいたり。本当に貴重な出会いの日々だったと思います」

『渡鬼』シリーズでの加津のけなげさ、利発さを楽しみに見ていた人も多かった
『渡鬼』シリーズでの加津のけなげさ、利発さを楽しみに見ていた人も多かった
【写真】懐かしすぎる…宇野が『渡鬼』で演じた野々下加津

「あなた、いつか書くわよ」。橋田さんは、宇野にこう言ったという。当時はピンとこなかったが、エッセイや取材などをこなす今では、書くことが天職だと思っている。特に歌舞伎についてのリポートや評論に力を入れている。

「石井先生が私を舞台『おしん』に抜擢してくださったことが、『渡鬼』につながりました。女性が自分らしく自立して生きることを、2人の先生が加津という役を通して、橋渡ししてくれました。

 子役時代にさまざまな素晴らしい人生の先輩たちから見聞きした経験をもとに、偉大な先生がたや俳優さんたちが遺してくれた伝統や文化を、若い人たちに伝えていきたいですね」

 野々下加津の半生は波乱に満ちていたが、宇野なおみは「渡る世間は鬼ばかりではない」ことを伝えていくために歩んでいる。

うの・なおみ 1989年生まれ、東京都出身。早稲田大学文化構想学部卒業後、カナダ・バンクーバーに留学。1996年舞台『マダム・バタフライ』で子役デビュー。舞台『おしん』で演技を評価され、1999年7月よりドラマ『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)の野々下加津役で脚光を浴びる。橋田作品の常連となり、演技を磨く。現在はライター、エッセイストのほか、TOEIC930点を誇る英語力を生かし、通訳、翻訳の仕事でも活躍中。

取材・文/合田みれい