今回の改正論議はその流れに逆行するもの

 いよいよ改正皇室典範が施行されますが、その内容や決定プロセスに対しては強い疑問と懸念が拭えません。本来、皇室のあり方は国民的な合意のもとで慎重に議論されるべき事柄です。十分な情報開示や国民への説明がないまま進められたプロセスは、積み重ねてきた民主主義の精神を損なうものと言わざるを得ません。

 今回の動きを巡り「愛子さまを天皇に」と望む国民の声が広がっていることは、男性中心の価値観が根強かった昭和の時代には見られなかった現象です。男女共同参画が当然となった現代において、国民の意識が大きく変化したことの表れでしょう。かつてのように本人の意思とは無関係に生き方を制限される時代ではなくなり「皇族だから基本的な人権が制限されても仕方ない」という論理に対し、多くの国民が違和感を抱くのは自然な感覚でしょう。

香淳皇后の20回目の命日に際し「香淳皇后二十年式年祭の儀」に参列した、佳子さまと眞子さん(2020年6月16日)
香淳皇后の20回目の命日に際し「香淳皇后二十年式年祭の儀」に参列した、佳子さまと眞子さん(2020年6月16日)
【写真】女性皇族として公務をこなされる佳子さま1歳8か月のころ、姉・眞子さんの手をギュッと握って。ほか、小室眞子さんと佳子さま姉妹の歩み

 昭和の時代、女性皇族は20代前半で結婚され、公務に長く従事する前に皇室を離れるのが通例でした。しかし、現代の女性皇族方は大学に進学され、成年後は精力的に公務に励まれるお姿を日々目にします。男性皇族と同様の教育を受け、公務の担い手としての責務を果たされている以上、女性であるという理由だけで皇位継承資格が認められない根拠は見いだしがたいのではないでしょうか。仮に「男系」という要素を見直したとしても天皇家が連綿と受け継いできた歴史と重みが失われるわけではありません。象徴天皇制を健全に次代へ存続させるためにも、女性天皇・女系天皇の容認は自然な選択肢であるはずですが、今回の改正論議はその流れに逆行するものとなっています。

 特に懸念されるのが、いわゆる「旧宮家からの養子案」です。明治の皇室典範で養子が明確に禁止された経緯を踏まえれば、血統的に36〜38親等も離れた民間出身の男性を皇室に迎え入れるという手法は極めて不自然です。男系男子支持者からは「理屈ではなく伝統だ」との主張もなされますが、これでは理性的な議論の放棄に等しい状況です。直系長子である愛子内親王をはじめとする近い血統が存在するにもかかわらず、なぜ遠い血縁の民間人を迎えてまで男系男子に固執するのか、理解に苦しみます。