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 注目を集めている“LGBT”。しかし、セクシャルマイノリティーと出会ったことがない人は、どんな人たちなのか想像がつかないかもしれない。そこで、当事者にインタビュー。生活について教えてもらった。

 順さん(36歳・仮名)は都内で働くサラリーマン。大学時代はゲイやレズビアンなどのセクシュアルマイノリティーについて学ぶサークルに所属、他大学の学生とも意見交換をしていた。両親へのカミングアウトは、そんな活動をしていた20歳のときだ。

「地元を出て首都圏の大学に通っていたので、両親には手紙で自分がゲイであることを伝えました。父親からの返事は“そのことについては何もわかりませんが”という書き出しで、あとは別の内容。特に非難されることもありませんでした。母親は理系の教師らしい“動物にもそういったこと(同性愛)はあるようね”と冷静な反応。気持ちはわかるけど、ほかに何か言いようがあったんじゃないかな?(苦笑) 私には姉と妹がいるのですが、彼女たちも“わかった”とすんなり受け入れてはくれました」

 家族の反応は思っていたほど深刻ではなく、受け入れてくれたことはうれしかった。ただ、そもそも性的な話がタブーな家庭だったため、ことさら騒げなかったのでは? とも考える。

「性の話、恋愛の話がタブーな家庭ではLGBTに限らず、子どもが性癖や人との付き合いに悩みを持ったときに相談を持ちかけにくいですし、対処できないのではないでしょうか」

 子どものころから一人称で“僕”や“オレ”を使うことに違和感があり、母親の化粧する姿をマネして遊んでいたという順さんは高校卒業後、ゲイであることを自覚。その年齢だからこそ情報を自分で集め、判断できる立場だったが、

「もっと幼くて情報の取捨選択もうまくできなかったら、外からの情報の切り貼りで自分をゲイではなく病気だと誤解していたかもしれません。小さいときは“オトコオンナ”と呼ばれたこともありました。できれば、そういう子どもたちが相談できるような場所をつくってほしいなと思います」

 順さんは男尊女卑の考えが強い、保守的な土地の出身。少数者や新しいものに排他的な性質を持つ“ムラ”社会は、いまも日本では少なくない。そんななかで、味方になってくれる家族の重要性を強く感じてきた。

「地元の友達へのカミングアウトは、受け入れられたり、無理だと拒否されたり、両方ですね。拒否された人については、もう仲よくする理由もないかなと思い、疎遠になりました。印象的だったのは、高校時代に偏屈で有名だった“わが道を行く”タイプの友達が“そうなんだ”のひと言でサラリと受け入れてくれたこと。変人扱いされることが多かったから、異質なものを受け入れるということに長けていたのかな」

 職場ではゲイであることを隠すことも、触れ回るようなこともしていない。しかし、同僚のほとんどは彼がゲイであることを知っており、特別扱いすることもなく、自然に付き合っている。ただ、たとえ気兼ねのない関係であっても、

「ストレートの人は圧倒的にマジョリティー。いろいろなことが社会的に保障され、やりたいことだけをやれているという現実があると思います。でも、LGBTをはじめ見た目ではわからないハンディを持っているマイノリティーは、2倍の早さで物事を考え、その場で適切な発言・行動をしようとしている苦労があるという可能性について、ちょっぴりでいいので考えてほしいですね」

 順さん自身、“自分は在日(韓国人)なんだ。名前は通名で、本名は……”と告白してくれた友達の前で、何も考えずに年金制度の話をしてしまったことがある。

「会話に入れない彼の悲しそうな顔を見て“しまった!”と、後悔したことがあります。少しの配慮をすることで、みんなが暮らしやすい社会になっていくのではないでしょうか」

〈LGBT用語解説〉

ゲイ(男性同性愛者)

 男性という自覚があり、恋愛や性的欲求の対象も男性という人のこと。“ホモ”という言葉は蔑称として避けるべき。